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氏原side‥₁
驚いた。
あんな康明を見るのは初めてだったから
僕の袖をきゅっとつかんで涙を流す康明が…
もう…もうめちゃめちゃ…可愛かった……っ
ギャップ萌えってこういうことだと思う。
全然離してくれないから、仕方なく掴んでいたカーディガンを脱いで、
行っちゃうの…?ってワンコみたいに訴えてくる彼の
頬を伝う涙を指で拭ってあげて
今にも溢れ出しそうな瞳に溜まるそれは
そっと唇で吸い取った。
しょっぱかったけどこれが康明の涙かぁって
じっくり味わっちゃうあたり、康明の言う通り僕って変態なのかなあと思って
少し熱い頬を両手で押さえた。
近くの薬局に辿り着くと、
プリンとかゼリーとか喉を通しやすいものと
解熱・鎮痛薬を手に取り、レジに商品を置いた時だった。
「…氏原ちゃん?」
「渡辺、さん?…こんなところで何してるの」
「あ~、ウチここでバイトしてるんだ…。」
レジカウンターの向こうには、どうしてこの身なりで面接に通ったのかは謎だけど
明るい髪を後ろで結んで、
蛍光色のカラフルなネイルを施した
わりと会いたくないランキングの上位にランクインしている渡辺さんがいた。
機械を通しながら、ビニール袋に詰める姿がこんなに似合わない高校生いるかって思うけど
正直今は急いでいるし、慣れた手つきで作業を進めてくれるのはありがたい。
「氏原ちゃん風邪?」
「僕じゃないよ。」
「じゃあ家族とか?」
「残念。独り暮らし。」
そんな簡単な会話をし、商品を詰め終えた渡辺さんが
不思議そうな顔で尋ねる。
「え?じゃあ誰のために?」
「先生だよ?担任の先生」
「え………」
固まる渡辺さんの考えていることなんて
手に取るようにわかる。
「…同じトコに住んでるからね。」
にこっと笑いかけて、同時に自分の大人気の無さにあきれる。
完全にフリーズしている渡辺さんが可哀そうだったけど
…別に僕、間違ったことは言ってないし?
「渡辺さん、早く会計してくれる?」
「っへ?!…あ、うん、ごめんごめん…」
おぼつかない手つきを見て、
かなり動揺しているのがわかって
笑いをこらえる僕はだいぶ性格が悪いと思う。自負してる。
「お…お大事にって…高木っちに伝えといて…」
「ふふ。誰の担任かなんて、僕は一言も言ってないよ?」
「あ、そっか。……え?」
「ま、いいや。休み明けのテストに支障でないように、
アルバイト頑張ってね。」
店の出口に至るまで僕を目で追ってきていた渡辺さんに
軽く頭を下げて店を後にした。
…今度はもう少し遠くの薬局いこっと。
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