アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
83
-
氏原side‥₃
自分を、少し落ち着かせるために
キッチンでタバコを吹かしていた。
なんか…あの康明は、調子狂うなあ……。
いつもの絶対的な自信を持ってる康明は勿論大好きなんだけど、こうして弱っていて、甘えてきたり、かと思えば
意味わからないくらい恥ずかしいことをさせてくる康明も
…結局どんな康明も大好きで…。
付き合っているでもない、始まってもいないこの関係の
ままでは、どうにもむず痒くて何かが足りなくて
確かな証拠が欲しいと思った。
好き、なんて言った事無いのに
言われたことだってないのに
彼の言動や表情を見るとどうしても期待してしまう
男同士の僕らの間で、確かな関係を築きたいと
思うのならば、男女のそれとは比べ物にならないほどの
壁をいくつも超えなきゃならない。
そもそもどちらかが行動に移さなければ何もならない…
短くなったタバコの火を消して
大きく息をついた。
…言わなきゃ進まないのだろうか…好きだと。
ちゃんと伝えさせてくれなかった
いつかの彼を思い出す。
約束も、将来も何も無い
消えてしまいそうに儚い
この関係を終わらせたいと思う僕を
康明はどう思うだろうか。
康明も、少しは僕と似た感情を僕に対して抱いているんじゃないだろうかと
微かではあるけど自信があった。
周りに向けるものと、自分に向けるものとでは
対応も、表情も、一つ一つが少しずつ違う気がしたから
あまり笑わない彼が、僕の髪を梳き柔らかく笑うのを
何度だって見てきたから
僕だけに見せる彼の笑顔が、すごくあったかくて
僕が好きだと伝えたときも、きっとそんな顔をしてくれると
その時の僕はどこか舞い上がっていたのかもしれない
火を消し潰した灰皿を見ると、まだ随分長い
僕のものではないタバコを見つけた。
最初に来た時には無かったそれは
僕が買い出しに行っていた時、康明が吸ったものだと
わかった。
康明の家なんだから、当たり前の事なのに
ほんの1時間前に康明もここで僕と同じように
タバコを咥えてたんだと思うと、それだけで
鼓動が早まった。
なにこれ…。本当、康明に出会ってからの僕は
今までとはまるで別人
僕じゃ、ないみたいだ…。
康明の吸っていたであろうタバコを手に持ち、
何となく、火をつけてみた。
「……ゔっ…おえぇ…まず……。
…ほんと、タバコの趣味だけはわかんないなぁ…」
メンソールしか吸わない僕に、タールの強い
康明の吸うタバコはお世辞にも美味しいとは言えなくて
でも、口に残る苦味は康明と深いキスをしたあとに
残る香りと同じで
喉の痛みを我慢しながらもう一口吸った。
…僕とする時にも康明は同じ事を思うのかな。
僕の吸ってるタバコのにおい…康明は嫌いじゃないかな
康明のタバコの火を消して、口直しに
(っていったら失礼だけど本当にこれは苦手)
箱からもう一本タバコを取り出して咥えたとき
ふとビニール袋に入ったままのプリンその他のことを思い出した。
そういえば…康明の寝てる部屋に放置したままだった
取りに行かなきゃ
音をたてないようにそっと寝室へ向かった。
「…康明?入るよ……?」
返事はなかった。
中に入ると、珍しくきちんと布団をかぶって
規則正しく呼吸をしていた。
寝顔…やっぱり可愛い……。
汗で頬にへばりつく髪の毛を退けてやると
少しくすぐったそうに身じろいだ。
先ほどまでの考えが再度脳内をよぎる…。
「康明は…僕の事どう思ってるのかな……?」
眠っている康明には届かないことを知っていて、言葉を紡ぐ。
「僕は…好きだよ。…康明が好き。初めて出会った時から
……大好き…。」
起きてしまわないように、小さな声で、囁くように。
………弱虫で、卑怯な僕。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
83 / 448