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肩を揺さぶられて、声をかけられた。
それになんだか美味しそうな匂い…
「…くん、やす……、やすくん!!」
「…っん…?だれだよ……それ…」
「あら?名前ヤスアキって言うんじゃないの?」
「……コウメイって読むんだけど…」
「え、うそ!ごめんなさい!てっきり…」
「てかそれよりさ…今何時?なんでまだいんの…?」
目を開けると、昼に助けてくれたオネーサンが
自分の額と俺の額を交互に触って首を傾げていた。
「ふん…熱はだいぶ下がったみたい…。
あ、あと今は7時になるところ。何か口に入れたほうが
いいかと思って、これ買ってきたの。食べれる?」
差し出されたのはお湯を注いで溶くだけの
コンビニで帰る卵粥だった。
食器はそこにあるものを借りたわって言って
母さんの茶碗に入ったそれを父さんのスプーンで
すくって俺の前にずいっと突き出した。
意味分かんない女…。
仕方なく口を開けてスプーンを誘い込もうとした
そこでまた何かに肩を引かれて
突き出されたスプーンが遠のく
あぁ、夢だった。これは。
もう戻ってこないあの人だ
もう随分遠い―…
誰…?また先輩?ゆさゆさと揺すられる感覚は
さっきと似ていて、でも少し違って
先輩より力強くて、大きな手…。
「…め………こう……い…」
微かに聞こえる俺を呼ぶ声
やすくんじゃなくて
これは…こうめいと呼ぶ
この愛しい温もりと聞きなれたこの声は
「………幸人…」
「…康明……。よかった…
呼んでも、全然反応ないし…寝てただけなら、良かった」
目を開けると、康明と何度も俺を呼ぶ幸人が
心配そうに俺をのぞき込んでいた
愛しいこいつの温もりを直に感じたいと思って
きゅっと優しく抱き込んだ。
幸人の匂いは、先輩のに似てた。
髪の柔らかさも、何となく。
でも俺はストレートのあの人の髪より
指に絡み付いてくるこの癖毛の感触が好きかも。
「前は似合ってねーとかいったけど…やっぱ
この方が幸人らしくていいな…。」
「…は?!な…何言ってんのいきなり…え、と
そうじゃなくて…、もう夜になるし…お腹、ちょっとは
減ったんじゃないかなって…あれ…」
「…?」
俺の胸に収まる幸人が指をさしたそこには
いつかあいつが買っていた真新しい土鍋があった
「卵雑炊つくったの…。卵…だいぶ割っちゃったから少ないけど…これくらいなら食べれそうかなって思って…」
さっきの夢と、今の幸人が重なった気がした
卵粥を、お湯で溶いてくれた先輩と
卵雑炊を、柔らかく煮てくれた幸人
全然違うのに、なんか
「…康明?何笑ってんの…ほら、口あけて?」
ぎこちなく食べさせてくれるその姿まで
似てた。
似てるけど、少し違って
それが、その先輩とは違う幸人が
可愛くて、欲しくて、愛しくて
「…俺猫舌なんだよ。」
「だ…だから何…別に冷めてからでも」
「ちげーよ。ちゃんとふーふーして食べさせてくれんだろ?幸人?」
薬のお陰か楽になった身体を起こし、
にんまりと幸人の方を見て笑う。
幸人は驚いた様に一瞬固まったけど、
すぐわかってましたとでも言うように
息をついて、ちょっとだけ顔を赤らめて
嬉しそうに作りたての雑炊を俺に食べさせてくれた
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