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氏原side‥₇
何がなんだかよくわからなかった会議を終えて
早めの帰宅。
康明はちゃんと休んでいただろうか
2学期が始まるまで、あと一週間を切った。
テストや体育祭の準備で、学校が始まれば
また康明と一緒にいられる時間が減ってしまう
そう思うと、なんだか無性に会いたくなった。
今朝も顔を見たし
昨日なんて1日つきっきりだったのに
…ほんと重症。
この年になって、ここまで誰かに必死になるなんて。
晩ご飯、作りに行ってもいいかな…。
流石に、こんなに毎日押しかけるのも迷惑、か…。
8のボタンを暫く見つめた後、結局13階を示すボタンを
押した。
僕ばっかりががっつくのも呆れられそうだし…。
何となく疲れのせいもあって精神的にも不安定だった。
目頭が熱くなり、思わず下を向く
その時
チーン…
何階かはわからなかったけど
エレベーターが止まった。
僕の家まではまだ到達してないから…乗り合わせかよ…。
溢れる涙を袖口でゴシゴシと拭って、
顔を見られることの無いよう後ろを向いた。
扉が開いて、僕を乗せた箱が小さく揺れる。
振り向かずとも人が乗ってきたことが予測できた
そのまま扉は閉まって、再び上を目指して
箱は動き出した。
……あれ?
普通、下に降りるときは乗り合わせることも多いけど
途中の階から乗り込んで、更に上まで行くなんて
どんな人…?
上の階に知り合いでも居るのかな…。
でも、それにしては…この箱は13階に向かって
上昇しているだけ。
他の階のボタンを押された形跡もない…。
―――急に寒気がした。
振り向くのも怖くて、扉のすぐ隣に設置されている
ボタンに手が届く訳もなく
ただ、何もありませんようにと願うばかりで
夏だというのにカタカタと小刻みに震える手を
誤魔化すように指を組んだり掌をこすり合わせていると
自分より大きな手にそれを掴まれた。
「…っ?!」
温かくて、細くて長い指が
スルリと固くなった僕の指を絡める
そのまま抱き込まれるような体勢になり、
後ろから香る慣れた匂いに
先程までの恐怖からくる緊張感は
完全に消えていた。
「…っ康明……」
「気づくの遅すぎ。……お帰り幸人。」
「ん…ただいま…。」
振り返った僕の唇を軽く吸うと康明は満足そうに目を細め
僕の頭をぽんぽんと撫でた。
ちょうどその時エレベーターは13階に到着し、
チーンと機械音が響いた。
「今日は幸人んち行っていい?」
ここまで来ておいて、僕が断るはずないのに
それを知っていて今日も意地悪そうに笑う康明
「いいよ…?えと、じゃ…なくて……
来てほしい…。会いたいって、思ってた…」
僕はいつも、あなたに翻弄されている。
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