アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
93
-
適当に寝たり起きたりを繰り返して、気がつけば
時計の針は17時手前を指していた。
そろそろ幸人の仕事が終わる時間。
何となく、駐車場が見える窓を眺めて待った。
最近は特に、抑え切れないこの気持ちが前に出て
幸人に会いたい、触れたいと
そう思わずに居られない。
あれだけ頑なに、もう人は好きにならないと
誓ったはずなのに
それをいとも簡単に崩してしまうのは
笑顔が可愛くて世話焼きの、彼。
幸人に出会ってから俺の世界は大きく変わった
セピア色の景色はしっかりと色を持った
鮮やかな世界へと変わっていった
幸人がいてくれるから、こうして
笑って過ごせているのかもしれない…。なんて
本人が聞けばバカだなと笑うだろうか
それか重すぎて引かれるのかもな
暫く外を眺めていると、駐車場に入ってくる
水色の軽が1台。
…やっと来た
鍵とスマホだけポケットに押し込むと
足早に家を出て、エレベーターが動き出すのを待った。
こんなにも、会いたい。
扉が開いたら、幸人はどんな顔をするだろう
お花畑みたいに優しい笑顔を見せてくれるかな
後ろ向いてたら抱き着いてやろうか
ゆっくりと上昇し始めたエレベーターに
ドキドキと胸を躍らせてその時を待つ。
8階を指して止まった箱が重い扉を開けた
そこには
俺を見て笑顔になる幸人は乗ってなくて
……泣いてる?
俺が見たのは泣き顔を隠すように、後ろを向いた幸人が
袖口で涙を雑に拭う姿だった
後ろに俺がいるとは気づいていないらしい幸人は
グーパーしたり、腕を組んだり、手を絡めたり
なんだか忙しなく動いていた。
固く結んだ両手が小刻みに震えている
もしかして俺が中途半端な階から上に向かって動く
このエレベーターに乗り合わせて来たから
こわがってるのか?
それならそれで、このまま静かに意地悪を続けるのも
悪くはなかったけど
今はそれより、”触れたい”が勝ってしまったんだから
仕方ない。
こんな季節でも冷たく震える手を包み込んで
幸人の身体を自分側に引き寄せた。
警戒心むき出しだった幸人の身体は
俺に包まれるとホッと安心したように脱力して
身体を任せてきた
「…っ康明……」
「気づくの遅すぎ。……お帰り幸人。」
「ん…ただいま…。」
俺の愛おしい人は
俺の方を振り返り、いつもと変わらない
あったかい笑顔を向けた。
俺が唇を寄せれば、まるで磁石の様に
お互いを求め合う様に幸人も背伸びして俺に近付いた
もう傷つけたくない
大切な人を壊したくない
それなのに、こんなに大好きになってしまった幸人
エレベーターが止まって、幸人の家までの道のりが現れる
「今日は幸人んち行っていい?」
断るわけも、断られるわけもない
お互いにわかってる
そんな俺達のこの関係は、いつまで続いてくれるんだろう
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
94 / 448