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教室に入れば、何故か後ろの方が賑やかい。
まだチャイムは鳴っていないので、特に何も言わずにそちらを眺めた。
「あ、高木先生おはよー!」
「あ、おぉ…。」
集団の中の誰かが俺に気づいて気の抜けた挨拶をする
そこからパタパタとこちらに向かって走り寄る女子生徒が数人。あの声は多分、こいつらだろう。
すると、その女子生徒達は自分の体操着をバッと開き、俺に見せつけてきた。
「……えっと、何。」
「は〜?わかんない!?このゼッケン見てよー!」
3日ほど前に配布した布ゼッケンを、体操着の腹の部分に縫い付けて参加するのがこの学校の決まりだ。
その縫い付けられた四角をよく見てみると、そこは黄色やピンクのカラフルな糸で、小さく星やリボンの形に縫われていた。
こういう、しょうもない所で拘るのはやはり女子だなぁと思うが、これがまた結構器用に縫われているものだから感心してしまう。
辺りを見渡せば、その様なマークが施されている中には男子生徒もちらほら見える。
「おー。凄えな、それ。自分でやったのか。」
「なわけ!うちらそんなに器用じゃないし〜」
朝からキンキン声で笑うのはよしてくれるか女子共よ。
ってことは親御さんか?気合入ってんなあ。
へ〜とか適当に返事をして、そろそろ席につけと促す。
でも、興奮気味の女子生徒はそんなもんじゃ聞かない。
「でもさー、まじ隠れ女子力半端ないよねー、ナベちゃんって!」
「それに今日イメチェンとか言ってめっちゃ可愛くなってるしー!」
ナベちゃん…ってのは、渡辺のあだ名だ。
生徒たちが集まっているのは、そういえば渡辺の席のあたり。
耳を傾ければ、渡辺の声も聞こえる。
「ハート?!やだよ曲線なんてめんどいってば!」
「ちょ、あんまり急かさないでよ!背中まで縫っちゃうじゃん?」
大体、文句ばかりだけど。
ちょうどその時チャイムが鳴って、俺に気付いた生徒達は各々自分の席へと戻って行く。
一番後ろの黒髪の女子生徒の席に大量の体操着を放置したまま。
……ん?
誰あれ。
必死に色とりどりの糸を駆使してゼッケンを縫い付けているその生徒が目にとまった。
「やっぱり先生もびっくりするよね?
ナベちゃんこれから清純派で行くらしいよ〜。」
そこでようやく俺に気付く黒髪少女は、手を止めて
ちらりと俺を見る。
「あ、た…高木っちおは〜…。」
「………渡辺?」
俺をそんなバカげた呼び方するのは一人だけだ。
艷やかな黒い髪を真っ直ぐおろして、
太めの並行眉に、マスカラと少し横に伸ばしただけのアイラインで自然な目つき。
ナチュラルメイクとはこういう事だろう。
なんていうか
………普通に可愛くて笑った。
「ちょ、何笑ってんのムカー!!」
「いや、悪ぃ、マジでごめんつい…www」
「汗かくと思って今日は化粧薄いだけなんだからね?!」
「あーそれで?俺そっちのがいいと思うけど。」
「…は?……じゃあ明日からもこれでいくけどさ…。」
何かよくわかんねえけどやけに潮らしい渡辺を見て
コイツと仲良くしてる女子の数人がクスクス笑う。
全くどいつもこいつも、体育祭だからって
妙なテンションどうにかしろよな。
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