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渡辺side‥₁
「…ねぇ、今までごめん。」
頭の上から聞こえた声に
一体なんの事だろうと首を傾げた。
「…何が?」
「はあ?そんなの冷たくしたり大人気ない事してたのに
決まってるじゃん!もしかして自覚無かったの?!」
「ちょちょ、何で氏原ちゃん逆ギレ?!」
思い当る節が無いこともなかったけど
でも、氏原ちゃんは友達じゃなくて、保健の先生だもん
仕事上ウチに優しくしてるだけだろうなっていうのは
わかってたから、特に気にしないようにって努めてた。
「…あー、まじ謝り損なんだけど。有り得ない。」
「は〜?あれでしょあれ、もちろん気付いてたし!
やっと謝ってくれたかって感じ〜?」
「んもーー何それ!ほんっと可愛くない生徒!!」
気づけば始まっていたくすぐり合いからの取っ組み合い。
いつの間にかバチバチしてた走る前の空気とは
全く変わっていて
ケンカ?なのに笑っちゃって面白くて楽しくて、変なの。
氏原ちゃん、もう身体は大丈夫なのかな?
少しだけ、ほんと少しだけだけど
やっぱり心配で、髪の毛引っ掴まれながらも
ちらりと氏原ちゃんの顔を見た。
するとそれに気付いた氏原ちゃんは、ふと手の力を緩めて
今まで見たことも無いような、とびきり綺麗な笑顔になった。
「ばか。もう大丈夫だから…そんな顔しないで?
…走ってた時、助けてくれてありがとう。」
「…………うん…。」
それは、いつもと同じようで全然違う
優しくて温かくて
かっこよくて可愛くて
すごく自然な笑顔だった。
「まあさ…負けは負けだし。何かお願い聞いてあげるよ。
その並行眉に合うアイメイクでもその崩れまくったパンダ目治してあげるのでも何でも。」
「…負けっつってもさ、ウチも棄権だから順位ないよ?
てか負けたらどーのとかって何か言ったっけ?」
そもそも、この2人で勝負する…てのも
ウチが勝手に氏原ちゃんにだけは勝ちたいとか
勝負心燃やしてただけだし…。
あ、もしかしてそれがバレてたのかな…。
「いーいーの。黙って考えなよ。
でなきゃ僕の罪悪感が無くならない。」
「あ、えっと……なら、さ…?」
「ん?」
氏原ちゃんのちょっとだけ不安そうな表情を見る。
もしかして、高木っちと話さないでとか
そんな事言われるかと思ってるんじゃない?
ウチは別に、そんな嫌なやつじゃないし。
でもお願い、聞いてもらえるなら
1つだけあった。
ずっと昔から、家族や親戚からしか呼ばれた事が無かった名前…。そしてそれを呼び合える関係に。
「ウチのこと…名前で、呼んで欲しい…。
そんで、生徒…じゃ、なくて、親友になって欲しい…」
上辺だけじゃない、何でも話せるような
ウチには存在したことのない”親友”に。
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