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氏原side‥₂
しばらくボーっと待っていると、お約束のようにうなだれた心ちゃんが裏口から出てきた。
なんかものすごく面倒くさそうなんだけど。
「…お疲れ様。」
「疲れた。おなか減った。病んだ。」
……うわーめっちゃ面倒くさい。
どうしよう。帰りたい。←
「えっと…とりあえず、乗りなよ。」
わざとらしい愛想笑いを浮かべて助手席を開ける。
ほぼ女の子のために作られたようなかわいいデザインの車。
内装も柔らかな雰囲気の車に乗って少し走ると、心ちゃんは既に元気を取り戻したのか「ゆきちゃんっぽい」とか「かわいい」を連発していた。
女子高生って何でもかんでも可愛いって言うの好きだよなぁなんて思いながら、目的地に向かった。
大きな駅の近くで、どこもパーキングはいっぱいだったり高額だったりするけれど、無駄にここらの知識を持ち合わせている僕は、ショッピングモールや駅からもさして遠くない小さなパーキングを知っていたりする。
「ゆきちゃん詳しいの?この辺。
さっきからくねくねした道ばっかり走って…。」
「あー、まあね。よく飲みに出てたからな~。」
「え、ゆきちゃんが?意外!!」
「そう?高校卒業してからなんて、みんなそんなもんだと思うよ。」
「へ~…。」
ここらの道は、庭みたいなものだった。
駅の裏通りに立ち並ぶネオン街。
僕のアルバイト先がこの近くだった。
心ちゃんみたいな純粋無垢な子からしたら、水商売なんて偏見の目でみられそうだから
余計なことは言わないけど。
他のお客さんにばれない様に
もっと言えば店の人間にばれない様に
狭い道やわかり辛い道ばかり選んで、朝まで誰かしらと寂しさを埋めるように過ごした。
その結果がこれ。
便利といえば便利
でも、昔の記憶を思い出すのは何とも言えない気持ちになる。
空っぽだった自分。
どんなに体が快感を得ても
どんなにたくさんの人間に好きだ、君だけだといっても
相手側の言い分なんて信用したことはない。
僕だけを必要としてくれているわけじゃないことくらいわかっていたから、いつもどこか冷めていた。
苦しいくらいに求めてしまう、康明と出会うまでは、ずっと。
「…ゆきちゃん?どうかした?」
「んーん、ちょっと考え事~。」
駐車場に車をとめたにも関わらず、ふと昔の事を考えてぼーっとしてた。
妹が居なくなってから、空っぽだった心は
少しずつ、変わってきている気がする。
あれから少しくらいは、前に進めただろうか。
「さてと…。いこっか!」
「うん!!」
車に反射した太陽の光を眩しそうに
目を細めた心ちゃんが笑う。
僕もそれにつられて笑う。
ぶっさいくな顔~とか悪態をついて。
多分、油断してたんだ。
いくら自分の中で、昔の僕と今の僕は違うと唱えたところで
別人になれるわけないんだ。
この場所には、思い出したくない思い出がたくさんある。
康明の前に体の関係を持っていた人間も、このあたりに住んでいるのが多い。
そう、例えば―――
「……あれ、サチ?久しぶりだね。元気だった?」
「…………ルナ。」
僕を、本当の名前で呼ばない人間…すなわち同業者であり
元恋人の、この男。
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