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氏原side‥₃
「……さてと。ごめんね、心ちゃん驚かせたよね。
………心ちゃん?」
「ふえ、えっ?何?!」
二人の背中をひたすらぼーっと眺めてた心ちゃんが慌てたように振り向く。
その顔は火照ったように赤く、口元は緩んでいた。
心ちゃん、本当に正直で顔に出やすいから面白い。
多分、めちゃくちゃタイプだったんだろう、ルナが。
でもね、ルナはダメだよ。
康明を狙うのもダメだけど、ルナはまた別の意味でダメ。
だって
「ルナ、子供居るからやめておいた方がいいよ?」
「へええ??!?」
年上彼氏、しかも子連れはクセが強い。強すぎる。
心ちゃん、まだ若いんだから。
「だから辞めとこう。ほらっ、まずはランチ行こ。」
「………………。」
自分から振ったくせに強引に話を終わらせ、
先を歩き出す。
でも、心ちゃんは何も言わず、その場で立ち尽くしていた。
もしかして落ち込んじゃったかな…
そういえば朝も店長さんに怒られたばかりだったし。
せっかく僕と遊べば元気になると言ってくれたのに期待、裏切っちゃってたらどうしよう…?
そう思ってちらりと心ちゃんを見ると、ヒールのせいであまり目線の変わらない瞳がじっと僕を訝しげに見ていた。
「………えっと、何?」
「ゆきちゃん、子供居るの知ってて付き合ってたの?!」
え、それ??
いきなり何を言い出すんだ、この子は。
「ねえ、人を不倫相手みたいに言わないでくれる?」
「だって元彼が子供居るの知ってるとか
それしかあり得ないっしょ!!」
「別れてから出来たの!付き合ってたって言っても、
もう何年も前の話だから!」
いつまでもぶーぶーいってる心ちゃんは
まだ信じてないみたい。
ため息をついて、呆れた素振りを見せつける。
でも、本当は心ちゃんの言う通りだった。
別れ話もしないまま僕は店を辞め、それからすぐに妊娠は発覚したらしい。
結局のところデキ婚だったのだから、面倒になるのも嫌で
暫く経ったのちに僕からきちんと別れを告げたけど。
あの頃の、あの世界の僕らからしたら
何でもない日常だった。
浮気も、不倫も何もかも。
みんながみんな心ちゃんみたいにきれいな世界に住んでいるわけじゃないんだよ。
でも心ちゃんは、知らなくても良い世界だから。
これまでも、もちろんこれからも。
「…………まじ?」
「まーじ。信じてよー。」
「………そっか。だよね!ゆきちゃんがそんな人だったらウチ親友なんてやってないもん!!
ねぇ、駅ビルの地下においしいとこあるの!行こうよ!」
何も知らない彼女からのほんの一言が、こっそり僕を
傷つける。
汚くてごめんね。
精一杯、きれいでいる事を演じようと思った。
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