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授業の空き時間に
俺はいつもどこに居て、何をしていたっけ。
幸人がこの学校に来るまで。
喫煙所にはいけなかった。
鉢合わせるのが怖かったから。
会いたいのに、会えない
傍に行きたいのに、いけない
どこかで幸人が俺と同じように寂しさの中に居るのならば、今すぐに涙をふきに行ってやりたい
なのに、それを自分が
…すべての原因を作った張本人である自分が駆けつけて何になる。
またも身勝手な感情の暴走で
これ以上幸人を苦しめることは許されない。
今日、最後の授業を終えて残る一時間の使い道を考えた。
普段は授業でしか使われることのない化学室
保健室に入り浸るまではよくここで、一人のんびり仕事を進めていたっけ。
がらんとした無駄に広い部屋に入ると、締め切られていたために独特の湿った空気と籠った匂いが広がった。
あぁ。
保健室の方が快適だったな。
太陽の日差しが明るくて、暑すぎず、寒すぎない絶妙な温度に設定された空調
笑顔で、たまに恥ずかしがって、赤い顔して怒ってくる幸人がいつも隣に居て
一人でいた頃は、何とも思ったことがなかったこの教室。
今では寂しさと、虚無感に襲われて胸が痛くなる。
いつの間に俺はここまで脆くなったんだろう。
ズキズキと痛む頭を押さえながら、教室の内線に電話を掛ける
『…はい、1年3組です』
「もしもし。高木だけど…少し用事があるから帰りは自分たちで頼む。」
返事を待たず、ガチャリと乱暴に切った。
朝とは比べ物にならないほどの頭痛。
いくら寝不足とはいえ、ここまで酷くなるのは
きっと何かほかの理由があるに決まっている。
たとえば…、精神的なもの。
不幸なことに、俺は普段薬なんて持ち合わせていないし
俺に何かあったときはいつだって万能な先生がついていた。
甘えすぎてしまったのか
甘やかされ過ぎてしまったのか
俺には幸人が居ないと
頭痛にも耐えることが出来ないほど
だめな人間に成り下がった。
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