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渡辺side‥₂
朝もそんなに顔色は良くなかったけど、今はさらに悪化しているようで、帰りのSTに姿を見せなかった理由はそれかと納得する。
ウチのために帰らずに、ここで待ってたの?
ばかなのかな、この人…。
「高木っち、めちゃめちゃ体調悪そうなんだけど。」
「んー、そうか…?……昨日あんまり眠れなかったから。」
”昨日”眠れなかった理由には心当たりがあったけど、
いま、ウチがそれを言うべきではないとセーブをかける。
「帰らなくて平気なの?
それかせめて保健室とか―――…」
あ。
あろうことかゆきちゃんの居る保健室とか!!
完全に地雷ワードだこれぇ……。
学校で体調が悪くなったら保健室。
小学校から学んできたこの知恵が
ゆきちゃんの職種を考える前に口から飛び出た。
おそるおそる高木っちを見ると、一瞬固まったけど
ため息をついてウチを見た。
「あのなあ、俺らは金貰って、仕事としてやってんの。
寝不足だから休みたいなんて甘えなの。自己責任なの。」
淡々と呆れた口調で説教めいたことを続ける高木っちに
返す言葉もなくうなずいた。
心配、しただけだったんだけどな。
でも、っていうことはやっぱり今日は一度も保健室には行ってないってことなんだ。
「…それに、幸人に心配かけられねえだろ。」
最後に目も合わせずぽろっと口走った台詞に目を見開く。
今まで、ウチの前では氏原先生としか呼んだことなかったのに
ふと聞こえたのは、ゆきちゃんの名前。
高木っちは気付いていないのか、ふう、とまた大きくため息をついた。
きっと、ゆきちゃんのこと、高木っちも好きなんだ。
それでも他に何か理由があって、どうしても良いよと言えなかったに違いない…。
だって、そうじゃなかったら
あんなに愛おしそうに人の名前を呼んだりしない。
どうでもいい人に心配かけられないだなんて思わない。
こんなに、泣きそうな顔、しない…。
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