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長かった一週間が、終わりを迎えようとしている。
俺に残された仕事は、もうあと残り一つだけだ。
一向に止まない頭痛に眉を顰めながら、
今日も化学室にソイツが来るのを待った。
思えば、この5日間、まともな食事は一切取っていないような気がする。
しかし今の薬局やコンビニは便利なもので、栄養ドリンクやサプリが豊富に置いてある。
お蔭で食欲がなくとも最低限の栄養は摂取できていた。
身体によくない、とわかってはいる。
けれど同時に、いっそのこと倒れてしまえばいいとすら思ってしまう。
だってそうしたら、幸人が居る保健室へ行けるから。
今も、幸人は
”トモナリ君”
と保健室に2人きりで話しているんだろうか。
余程の理由がない限り、生徒の事を名前で呼んだりしない幸人が、トモナリだけは、いつもそう呼んでいた。
もしかしたら俺の事は
もう名前で呼んでくれないかもしれない。
一応は毎日学校で顔を合わせているのに
高木先生とすら呼ばれることはなかったんだから。
今頃、トモナリは俺のような邪魔者が消えて楽しく過ごしているんじゃないだろうか。
幸人を疲れさせてはいないだろうか。
幸人に無理をさせていたら、いくら生徒だろうと許さない。
…なんて。
この感情は単なる嫉妬でしかないというのに。
俺以外が幸人を疲れさせるのも、俺以外が幸人を無理させるのも腹が立つ。他の誰かと会話することも許し難いほどに、脳内は独占欲と束縛欲で溢れかえっている。
よくドラマなんかで
『手放すには惜しい存在だった』なんていう台詞を聞くけど
俺にとって幸人は”惜しい”なんかで済まされる存在じゃなかった。
空っぽの俺を満たしてくれた
唯一無二の存在だったんだ。
幸人に会いたい。
目も合わせてくれなくなって5日。
自分の中の幸人の大きさに改めて気づいた。
俺の意志で幸人を突き放した癖に
自分勝手に傷ついているなんてどうかしている。
俺じゃ、幸人を幸せにできない。
また、あの時のように
壊してしまうような気がして。
机に肘をついて俯いていると、ガタンと大きな音を立てて急に視界が揺れる。
驚き、顔を上げると
そこにはすこぶる不機嫌そうな渡辺の姿があった。
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