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「なんだ。……来てたなら声かけろよ。」
ガタガタと乱暴に机を向い合せて、
床と机の擦れる音をわざと響かせて
お蔭で頭痛はピークの中のピークだ。
何だこいつ。
「高木っち、ここわかんない。」
「はぁ?…前も教えただろ。集中しろって」
「集中してないのは高木っちじゃん」
「……はぁ?」
どうして今日はこんなに喧嘩腰で向かってくるのか。
それは渡辺本人にしかわからないことで、もちろん赤の他人の俺にはわからない。
これでも体調がもう少しマシなときならば、
何もないようにやる過ごすことくらい容易い事だろうが、今日はやめてくれ。
お願いだから。
「気になるの?下」
床の下を指差す渡辺。
この真下が保健室になっていることを知っての事だろう。
月曜の態度を見た限り、渡辺は多分俺たちの事情を多少なりとも知っている。
それが彼女の中だけの憶測なのか、幸人から直接聞いたことなのか、そんな事をわざわざ聞く気もない。
でも、どちらにせよこいつは俺にとって幸人の話題が地雷だと知りながらも、幸人の話題を出してきた。
…何を考えてる。
「お前なあ。」
「さっきから兎毛成がどうこう呟いてたけど。
そんなにゆきちゃんが気になるなら見に行ったらいいじゃん。」
渡辺の言葉は正論だ。
まっすぐに俺を見据えるあどけなさの残る瞳は、俺のそれとは違って、汚いものも、暗闇も映し出さない透き通ったものだった。
「俺は―――…」
俺は…どうしたい?
今、保健室に行って幸人はどう思う?
どうして来たんだと怒るか
顔も見たくないと軽蔑するか
それとも…トモナリとの時間を邪魔されて
悲しませる、とか………?
寒くもない、クーラーも効いていないこの室内で
ブルっと大きく身震いした理由は
間違いなく悪寒だった。
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