アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
222
-
「…高木っち。ウチ兎毛成と幼馴染なんだよね。」
「………それとこれが何の関係―…」
「兎毛成って昔から好きになったらそればっかりになるの。」
「………。」
「高木っちがゆきちゃん避けてんの、あいつが気付かないわけないよね。」
渡辺のやけに耳にかかる高い声が
頭の奥に響く。
だから何だ、とでも言ってやればいい。
大人をからかうんじゃねえ。
教師をバカにするな。
そんな事言ってないで勉強しろと一喝してやれば
この胸騒ぎは収まるんだろうか
いや。無理だ。
「お前何が言いたい。」
「高木っちが来る事のない保健室で
確実にゆきちゃんより力の強い兎毛成が何企んでるかなんて、わざわざウチが言わなくたって―――っきゃぁ!」
「っるっせぇんだよ!!!」
渡辺の言葉を最後まで聞くことなく、俺は無意識のうちに彼女の胸ぐらを掴みあげた。
どうしてかはわからない。
ただ、ひたすらに背筋を走る嫌な汗と
ズキズキと奥から脈打つ頭のせいで
まともに考えも回らずに、血走った目で渡辺を睨みつけていた。
腰が抜けたようにへたりと座り込む生徒の目に涙が浮かんでも
手を差し伸べてやらない俺は、教師失格だろうし
生徒…いや、親友を見捨てて、自分のもとに走る俺を
幸人はバカだねと笑ってはくれないだろう
それでも
空腹と寝不足でフラフラの身体に鞭を打ち、階段を下りた。
ほんの十数秒がものすごく長く感じたんだ。
幸人。
幸人
幸人
幸人
早く、行かないと。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
224 / 448