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俺が残した痕を憎らしそうに見つめるトモナリを
精一杯睨みつける。
本当は今すぐ殴りかかってやりたい。
けれど幸人がトモナリがいいと思うなら、
トモナリの隣に居る事を望むなら、
俺は――…
……はやく、ここから出ていかないと。
幸人には、幸せになってほしいから。
だからトモナリじゃなく、俺に何か言えよ。
決定的な一言を。
俺はどうしたらいい?
何をしたら、幸人のためになれる?
幸人が幸せになるために、俺はどうするのが正解?
幸人、教えてくれよ
「…すけて……っ、康明、たすけて……っ!!」
―――トモナリの手が、幸人の下着に触れた瞬間。
本当に、本当に小さな声だった。
それを一言たりとも聞き逃さなかった自分に驚く程だ。
怯えたような、縋るような、
今にも泣き出しそうなか細い声。
誰に怯えているのか。
トモナリか、それとも俺か。
そんな事はどうでも良かった。
幸人が俺に進むべき道を教えてくれた。
俺を求めてくれた。
俺に課せられた使命は”幸人を助ける事”。
自分の着ていたジャケットを脱ぎながら、
2人の居るベッドへ一直線に進んだ。
途中椅子や薬棚が邪魔をしたがそんなもの知ったことではない。ガシャガシャと音を立てて自分の後ろで倒れていく何かに振り返ることなく進む。
肌を露出しすぎている幸人の脇に
自分のジャケットを放り投げると、
幸人の上に跨っている邪魔な物体の首を掴み上げた。
ここで俺自身の気持ちを優先するならば、
まず確実にこいつの腕をへし折っていただろう。
それだけじゃ済まない。
下手したら殺してしまうかもしれない。
でも、今は俺が好き勝手する時間じゃない。
今は
今は
「………康明…………っ」
「………………助けに来たよ、幸人。」
大きなジャケットを、震える手でおずおずと羽織るのは
こんなにも愛しい人。
後頭部に手を差し込んで髪を梳くように撫でると、
ゆっくりと瞼を下したその目元からは大粒の雫が落ちた。
いくつも、いくつも溢れた。
助けたはずだったのに
また幸人を泣かせてしまった
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