アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
230
-
その時、場の雰囲気に似合わない軽快なメロディーが鳴った。
「…もしもし?あー。うん、終わった。
うん……うん。………………よしよし。」
音の正体はトモナリの元にかかってきた電話で
俺に向けるぶっきらぼうな声でも
幸人に向ける猫被りの声でもなく、彼にしては
自然で温かみのある声だった。
トモナリが電話を切ったその直後、バタバタと物凄い勢いで階段を駆け下りてくる足音。
その音は一直線にこの部屋に向かっている気がして、
慌てて幸人から身体を離す。
幸人も幸人で上裸にジャケットなんて服装じゃ流石にマズい訳で、慌ててカーテンを引いて着替え出した。
大きな音で開け放たれる保健室の扉。
決して人の事は言えないが、こいつはここが保健室だという事をちゃんと理解しているのだろうか。
涙で目を潤ませ、赤く腫らした渡辺は
俺、カーテン、トモナリの順で視線を動かすと
嗚咽を漏らしながら走っていったんだ。
トモナリのもとへ。
「うっ、うええぇ〜〜んっ!よしくぅぅうんんっグス…」
「はいはい、頑張った頑張った。ナベは偉いね。」
子供をあやすように頭をポンポンと撫でるトモナリは
多分俺が今まで見てきた中で1番人間味のある姿で
困ったように笑いながら、自分のポケットに入っていた
ティッシュを渡辺に差し出している。
え、待って。ちょっと待って。
俺の頭の中、大混乱してんだけど。
着替えを終えた幸人が、大きく溜息をつきながら
出てくる。
その様子を呆然と眺めていた俺に小さく笑いかけると
トモナリと渡辺に向き直って
深く頭を下げた。
「2人とも、ありがとう。
………迷惑かけて、ごめんね。」
この場で状況を何一つ理解できてないのは俺一人で
立ち尽くしていると幸人がまるで悪いことをした子供と
一緒に謝る親のように
俺の頭をおさえ、2人で頭を下げる形になった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
232 / 448