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さて、ここで解説タイムが始まる。
とはいうものの、理解出来ていないのは俺だけなのだから3対1の軽い説教タイムのようなものだ。
「…先に言っておくと、今まで僕はトモナリ君と何日も、何時間も2人で過ごしてきたけど、こんな事されたのは初めてだよ。」
「……はぁ…。」
「…って事はわざわざこの日このタイミングで仕掛けた
ってことも無きにしもあらずかな、と思って。」
「……ほぉ…。」
「この1週間、放課後のこの時間なら確実に、康明は
心ちゃんと一緒にいるから。
僕らの状況が変わらなかった時の最終手段だったんじゃ
ないかって。」
「……へぇ…。」
「っていうのを、トモナリ君の態度と心ちゃんの”よし君”呼びで僕は察したんだけど、どうかな?」
俺を向いていた視線が前の2人に向けられる。
2人は顔を見合わせて、申し訳なさそうに小さく頷いた。
「…よし君って何……」
あまりに予想外の自体に、頭はまだ追いついていなくて
俺が何とか声に出せたのは、こんなどうでも良い質問だけだ。でも気になるじゃん。トモナリの”と”の字も入ってねーんだぞ。
「………僕。」
音も立てずに手を上げるトモナリ。
いや、そりゃわかってんだけとさ。
俺がそう突っ込むより早く、口を開いたのは
先ほどトモナリから受け取ったティッシュを鼻に擦り付けているこの女だ。
「え、ウチまた兎毛成の事よし君って言っちゃった?」
「うん。完全に言ってた。」
「えぇ〜…気付かなかった…。」
「逆に何でいきなり兎毛成って呼び出したのか謎だし。」
「だってよし君の事よし君って呼ぶのウチだけだから…」
目の前で夫婦漫才というか
カップルの馴れ合いのようなものを見せつけられて、結局何なんだとため息をつくと、横から幸人がこそっと耳打ちしてくれた。
「彼ね、兎毛成美晴って言うんだよ。珍しい名字だから
名前だと思われる事も多いみたいだけどね。」
「ともなり…?が名字で…よしはる………?名前2個連ねてんなよ………わかりやすくしろ…。」
例と如くトモナリが名前だと勘違いして、もう自分は名前で呼んでくれないかも、なんて若干…いやだいぶショックを受けた数十分前の俺の気持ちを返せ、このやろう。
何に対して怒ればいいのか
そもそも怒る理由があるのか
必死に今言うべき言葉を探りあてた。
「悪かった。……渡辺も、兎毛成もケガしてないか…?」
「ウチは別に…。」
「僕も大丈夫。」
「そ、か。よかった…。」
ふと安心した瞬間に襲い来るのは急激な眠気。
隣の、もはや完全に俺の安定剤と化した幸人という存在の肩に頭を乗せ、必死に瞼だけは降ろしきらぬようにと堪えていたけど
「あとは僕に任せていいから。」
どんな場所のどんな音よりも、俺を安心させる幸人の声が頭の中に響いて
瞬く間に意識を手放す自分がいた。
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