アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
233
-
氏原side‥₂
ナルに確認を取れば、特に康明に急ぎの仕事はなさそうだったので、眠る康明を僕の車に押し込めて車を走らせた。
正直、自分の家は誕生日以来荒れに荒れていて、とてもじゃないけど康明を連れて入れるようなものではなかった。
康明は多分寝ぼけていただろうけど、一応康明の家に入ることの許可はもらったので問題は無いだろう。
康明の家の冷蔵庫の中を必死に思い出す。
賞味期限が切れたものもいくつかありそうだけど、康明はそういうのちゃんと見て捨てているだろうか……?
とそこまで考えて、そんなわけないよなとため息をつく。
だって、初めて家に行ったとき水とお酒しか入ってなかったような冷蔵庫だよ。
冷蔵庫の中の食品なんて彼からしたらあってないようなものだろう。
まあそんなところも踏まえて彼が好きなんだからどうしようもない。
僕がいないとご飯も睡眠もろくに取れなくなってしまった康明が愛しくて仕方がない。
かくいう僕も、以前多めに処方された眠剤を飲みあさっていたんだから人のことは決して言えないが。
家の駐車場について康明を揺さぶると、ヤダヤダ動きたくないとか小さな子供みたいなことを口走ってきて、
可愛さに悶え死ぬかと思いながらも心を鬼にして助手席から引きずり下ろした。
ふてくされる康明の背中をポンポンと撫でてエレベーターへと促す。
寝ぼけている康明なんて今まで何度も見ているけれど、
こんな露骨に甘えてくるのは初めてで、
今すぐ抱き着いて撫でまわしたいのを必死で押さえながら8のボタンを押した。
「ほら、康明、鍵貸して。」
「……ん~…ポッケん中ぁ。」
「はいはい…。」
自分で動く気はないのだろうか。
僕に鍵の場所を知らせると、ここから取れとでもいうように腰をずいっと突き出してきて
なんだかもう恥ずかしくて気が気じゃなかった。
いつも康明ってこんなんだっけ?!
なんか僕の心臓が悲鳴上げてるんだけどどさっきから!
リビングまで、後ろからぴっとりと密着してくる康明に耐えながらなんとかその腰を下ろす。
予想通りといえば予想通りだけど、そこらに散らばった酒の空き缶や灰皿に山盛り溜まった吸い殻が、
その不健康さを物語らせた。
冷蔵庫を見ても食材が減っている形跡はないし、
これはいけないと思いながらも覗いたごみ箱には
カップ麺の容器の一つも入っていないんだから
さすがに驚く。
この生活を5日間も…。
そりゃ力も入らないし倒れるよ。
もっと自分のことを大切にしてほしい。
「幸人…。」
その時、康明の僕を呼ぶ声が聞こえた気がして
ちらりと康明の方に目をやると、案の定僕を待っていたらしい康明が手招きをしたのでそちらに向かう。
きゅっと抱きしめられて体が強張る。
だからもう、一体全体今日はどうなってるの、康明!
真っ赤な顔を隠しきれていない僕に対し、特に気にした様子も見せず、康明が言ったのは「腹減った。」だった。
うん、そうだよね。
一週間何も食べてなきゃ減るよ。うん。
少なからず何かを期待してしまった自分が恥ずかしくてたまらないのと、ようやく何かを食べる気になってくれた康明への嬉しさが交差して、何とも複雑な感情だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
235 / 448