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なんとなく恥ずかしくて、
本当は幸人の車に乗せられた時点で
そこそこ意識ははっきりしていたけれど
寝たふり、寝ぼけたふりを決め込んだ。
幸人だって俺に同じようなことしてきたこともあるし、
俺ばかりが責められるようなことは無い。
それに、俺のわがままや甘えたな行為にいちいち赤面しながら平静を保とうとする幸人が面白くて、可愛くて、
辞め時を失ってしまっていた。
俺の家に入るや否や、食品やごみのチェックまでして
本当に何なんだこのオカンはって思う。
でもそのすべての行動が俺への心配から来ているのだと思うと、
何をされても悪い気はしなかった。
きっと何も食べてないのもばれただろうし、
後を向いていても今幸人がどんな顔をしているのか
想像できる自分はすごいと思う。
多分、眉を下げて下唇を噛んで
何度かため息でもついているんだろう。
「幸人…。」
何か言ってやりたくて、俺は幸人を呼んだ。
振り返った幸人は、やっぱり俺の予想通り
シュンとして元気のなさそうな顔だった。
ゆっくりこちらに近づいてくる幸人を優しく抱きしめ、今、幸人が俺に望んでいることは何かと考えた。
何一つ食品の減っていない冷蔵庫に、
弁当の空容器のひとつも入っていないごみ箱。
俺の体調を心配してくれているなら。
「…腹減った。」
これしかないだろう。
少し考えたそぶりを見せた後、幸人が口を開く。
「おかゆとかの方がいいかな、
しばらく何も食べてないでしょ?」
うん、それが一般的な考えだと思う。
確かに数日間何も食べてないし、消化の悪いものは体に悪いだろうしたくさん食べる事もできないだろう。
でも俺はこの食欲のない中でも、食べたいものはちゃんとあった。
幸人の手料理も大好きだけど、そうじゃなくて
どんなに不味いものでも、
店のでも冷凍のでも何でもよかった。
「ピザ食いてえ。」
もう一度、お前の誕生日をやり直させてほい。
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