アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
235
-
氏原side‥₁
康明の身体に負担にならないものがいいと思って提案したおかゆ。でも、康明が食べたいといったのは意外なものだった。
それを食べたいといった理由はわかる。
多分、僕の考えていることで間違いは無いだろう。
目の奥は熱を帯びて、康明の、次の言葉を待ってしまう。
「ろくに食べてないのに…いきなりピザなんて重くない?」
半分は本気の気遣い、そしてもう半分は、康明にその台詞を言わせるためのものだ。
康明は、僕が何を考えているか分かったんだろう。
ふっと小さく息を漏らすと、僕から体を離し、しっかりと目を見ていってくれた。
「幸人の誕生日、やり直しさせてほしい。」
あぁ、もう。
僕はどうしてこんなに涙もろくなってしまったんだろうか。
全部、全部康明のせいだ。
ばか。
「……仕方ないなあ。かなり簡易的なのになっちゃうけど、味は我慢してね?」
「…ん。」
溢れた涙は康明の手に拭われ、目の中いっぱいに溜まった涙は康明の唇に吸い取られた。
キッチンに向かうと、眠たいはずの康明もちゃんとついてきてくれて、小麦粉をこねてくれたり、野菜を洗ってくれたり
今までも何度か一緒に料理を作ったことはあったけど、それとはどこか違うような気もして。
「なー、幸人。これあれだな、初めての共同作業。」
「…わ、かったから……ちょっと離れて。危ないバカ。」
僕も同じこと思ってただなんて口が裂けても言えないけれど
思いが通じているような気がしてすごく嬉しかった。
「よっし…。完成!」
康明がたくさん食べられるというから、無理させようという気はないけれど、ピザに合うように冷凍のフライドポテトを少しだけ揚げて、残った野菜でサラダを作った。
メインのピザの生地はフライパンで軽く焼いただけのものだし、ピザソースもないからケチャップに調味料をいくつか足しただけのもはやピザと呼んでよいのか疑問なくらいの”ピザもどき”だ。
でも、それの完成を楽しみに待っていてくれた康明からしたら、たぶんこれが本当のピザだろうが偽物のピザだろうが関係ないんだと思う。
テーブルの上に三つの器を並べると、目を輝かせた康明のおなかの辺りからぐぅ~っと間抜けな音が聞こえてきて、思わず2人で笑いあう。
「いただきます。」
手を合わせて、声を合わせて、三角にカットされたピザに手を伸ばした。
先週は緊張で味なんてほとんどわからなかったピザ。
今日は、ピザ屋さんのちゃんとしたものとはかけ離れているのに、すごくおいしく感じた。
目の前に康明がいてくれるという幸せ。
それが、この先も続いていくんだという幸せ。
ずっと、こんな日が来るのを待っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
237 / 448