アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
236
-
氏原side‥₂
「…うあー…、やっぱりちょっと作りすぎちゃったね。」
2人の手が完全に止まっても、まだテーブルの上にはピザが4切れとサラダが少し残っていた。
「んー、まあ明日食えばいいだろ。」
当たり前のように言ってのける康明のこの言葉の意味は、今日は泊まっていっても良いという事で。
じわじわと嬉しさが全身から溢れ出して、気を抜いたらだらしなくニヤけてしまいそうだ。
何気なくポンポンとお腹を叩いて満腹のジェスチャーをしてみると、それを見た康明がぼそっと「可愛い……。」って呟いた。
気がした。
「何……もう…。」
僕のことをじっと見つめる康明に、耐えきれなくなった僕が目をそらす。すると康明がその視線の先に移動してきて、また目をそらす、また視線の先に移動してくる、それを何度か繰り返したのちに、康明がしびれを切らしたように口を開いた。
「俺、誕生日のやり直しするって言ったよな?」
「……うん?」
「ピザ食った後、お前が言ったこと、もう一回言えよ。」
「…………ん?!」
いや、それは何の虐めですか。
「やだ。絶対ヤダ。もうむり。」
「なーあー。お願い。」
そりゃさ、あの日康明に言った事に嘘は一つもないから、一言一句間違えずにいえる自信はある。確かにあるけど。
それは恥ずかしすぎるし康明だってちゃんと聞いていたはずなのにまた同じことを言わせるだなんてサディストにも程がある。
「ぼ、僕が言うより……あの日の返事、ちゃんと聞きたい。」
苦し紛れの言い逃れに、康明は一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに「いいよ」と返事が返ってきた。
「幸人の言った言葉、一つ一つに返事してやるよ。」
にやりと意地悪く笑うその表情が久しぶりで、この先を想像するとぞくりと腰がうずく。
早く言ってほしくて、でも聞きたくない。
ただ、この間と違うのはこの先に言われるであろう言葉が悲しいものではないという事。
辛い言葉が再び降り注ぐことは無いという事。
聞けばまた泣いてしまいそうだから
本当はあまり聞きたくない。
でも、いつもあまり言葉にしてくれなかった康明が言ってくれるというならば、聞きたい欲がどうしても前に出てきてしまうわけで。
「そうだなー。じゃあ、順番に言ってこうか。」
どきどきとうるさい心臓を手で押さえながら、次にくる言葉を待った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
238 / 448