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氏原side‥₃
今、僕はとんでもない拷問にあっている。
その内容は、僕が先週康明に対して言った言葉一つ一つの細かく細かく返されていくというもの。
「幸人に出会って、たくさん笑えるようになった。
今までどんなことも興味がなくて、深入りしようとは思わなかったけど、幸人と出会って、過ごしていく毎日が楽しくて、気づけば笑ってた。
会う回数を重ねるごとに、幸人の少しの表情の変化に気付いては、これは本当に楽しいことだ、これは少し演技が入ってんなって勉強していった。
腕の傷で俺がお前を嫌いになるはずがない。
辛いと思うとき、これからは俺がそばにいて、幸人が傷を増やさないで済むくらい、毎日を楽しいものに変えてやれたらと思う。
先輩との事を知っていながら、俺の事を好きになってくれてありがとう。
憎んでいた存在を、こうして隣に置いてくれてありがとう。」
康明は先週僕が言った事をそのまま、順番も狂わせず的確に返事をしていって、その完璧っぷりと言ったら、彼の記憶力の良さを憎みたいくらいだった。
そしてこの先。
この先に僕はありったけの思いを込めて
康明に好きだと伝えたんだ。
その返事が、今から、来ると思うと。
ごくりと唾を飲み込んで、覚悟を決める。
もう、保健室で一度言われたことだけど
それでももう一度康明の口から出てくるであろうその言葉を聞きたくて。
ふー、ふーと鼻息がちょっと荒くなっちゃったかもしれない。
だって康明がおかしそうに笑ってるんだもん。
「ちゃんと言うから。おとなしく待っとけって。」
頭をクシャりと撫でられて、手の温かさに落ち着きを取り戻す。
どこまでも僕の事を知り尽くしている彼の慣れた行為が僕を穏やかにさせて、そして興奮させる。
「俺も、幸人が好きだよ。
初めて会った時には、多分もうどこか惹かれてた。
幸人が好きだから何度も幸人の家に泊まって、キスもした。セックスもした。
先輩じゃなくて、幸人が好き。」
涙ぐむ僕の目元をぐっと拭われたせいで、
かすんでいた視界が再びクリアになる。
「ちゃんと、俺の顔見て聞けよ。」
必死にコクコクと頷くと、また瞳に膜をはる涙が邪魔で、何度も拭った。
最愛の人から告げられるこの言葉を、僕の為に動く口元を、どうしてもこの目に焼き付け、耳に焼き付け、一生の宝物にしたくて。
「幸人。俺と付き合ってください。」
「………はい。」
あぁ、幸せって、こんなにあったかくて
嬉しくて、他の何とも比べ物にならないほど特別なんだ。
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