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いつもと変わらないクラス、いつも通り騒がしい教室、廊下まで響き渡る声。
何もかもうるさくて仕方がなかったのが嘘のように、今日もガキは元気だなあって暢気に思っていられるのは自分の心に余裕が出来たからだろう。
教室に入ると、ちらほら冬服の生徒も見える。
これから10月の頭にかけて冬服へと移行していくから、教室の中はいつもより少しだけカラフルだ。
白いシャツ一色だった先週に対し、白、黒に加え、色とりどりのカーディガンを羽織る女子生徒が目立つ。
その中でも一番目を引いたのが、後ろの席の金髪頭。
「おい、結局清楚系辞めたのかよ?」
「そー!あれ地味だからもう飽きた!」
もはや懐かしさすら感じる黄金色の巻き髪に、周りを黒く囲った不自然な目元。
テカテカの赤い唇に強そうな爪。
「飽きんの早すぎだろ。まぁそっちの方がお前らしいな。」
「でしょー?」
「あんまり髪いじめ過ぎるとハゲるぞー。」
「は…はぁ~?!高木っちほんとムカつくんだけど!」
いつも通りの光景。俺が渡辺をいじって、渡辺がキレて、それをコントのように繰り広げて教室が笑顔に包まれる光景。
そんな中で俺たち2人だけが少しいつもと違う。
いつもはこのまま教卓に足を進めるところだが、
生徒たちの笑い声に隠れるように、そっと渡辺の耳元に顔を寄せて囁いた。
「ありがとうな。全部、お前のおかげ。」
汚れを知らないキラキラの笑みは、少しだけ影を伴っていて、瞳にはうっすらと涙が溜まっていた。
それが何だか綺麗で儚くて、
少しだけドキッとしたのは誰にも言わず、秘密にしておこう。
だがその数秒後、ティッシュの端を目に突っ込んで涙を吸い取りつつ
メイクが、メイクが…とか呪文のようにぶつぶつ唱えていたのを見てしまったから俺のドキっは瞬時に消え失せる事となった。
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