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学校内は徐々に文化祭色に染まってきた。
各クラスで模擬店を開いたり、展示作品を制作したり。
活気にあふれる生徒の姿はキラキラしていてなんだか羨ましい。
正直、自分が学生の頃なんて音楽か、そうじゃないかの二択しかないような生活だったから、文化祭で特にこれといった思い出はない。
だから、俺の生徒達には、どこの誰よりもこの行事を楽しんでほしいと思っている。
文化祭は11月の上旬に2日間通して開催されて、1日目は内部公開、2日目が来賓や、一般の人たちも立ち入ることができる大規模なものだ。
その1日目の内部公開の日、3年に一度だけ行われるものがある。
”ゲストライブ”だ。
殆どの生徒にとって、最初で最後のイベントであるこのゲストライブ。
ライブと言っても、呼ばれるゲストの種類は様々で、
例えば、大喜利番組でレギュラー出演している落語家
例えば、チケットが発売すれば即完売の売れっ子芸人
かと思えば、超有名大学を卒業した本校のOB
ゲストの詳細は毎年非公開。内部公開当日に発表されるらしい。
全校生徒が注目し、ハズレの年でないことを祈りながら発表を待つ。
なかなか面白い企画だと思う。
……なんて言うか、俺も、他の生徒や教師と同じようにその日をドキドキしながら待ちたかった。
本来、ゲストを知っているのは校長、教頭と文化祭実行委員を担当している教師の3人だけだと聞く。
今年も思わぬ報告がなければ、例外ではなかっただろう。
それは、ほんの昨日の出来事だった。
あまり鳴る事のないスマホが着信を知らせた。
幸人はアプリからの通話がほとんどだから、まず音が違う。
誰だと思って表示を見ると、何となく見覚えのある番号だった。
「……はい。」
『おぉ、久しぶりだな。』
電話の相手は、聞き慣れた声の持ち主。
いや、聞き慣れているのは歌声だけで、まともな会話を交わしたのはもう何年も前の事で。
普段の声はCDの中よりもテンションが低くて、少し掠れていて、俺が言えた事じゃないがかなり気怠そうな印象。
「…元気にしてたか。」
『そんなわけないだろ。今日も病院行ってたんだよ。』
「っは。相変わらずいつも死にそうだなぁお前。」
『ほんとだよ。まあ俺は最強だから死なないけどな。』
電話相手は中学時代の友人…。
今の名前で言うなら…メディアに一切顔を出さない、謎多きシンガーソングライターRickyだった。
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