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ウチの学校の文化祭は毎年11月の第一金曜、土曜に開催されるのだが、今年は運悪く11月1日が金曜日だ。
そのため、生徒たちは今、忙しさのピークを迎えている。
模擬店を出す俺のクラスは、タピオカドリンクを販売する事に決まった。大量の段ボールを使って屋台風に教室をアレンジするらしいが、まあウチには手先の器用なギャルが居るから問題ない。
「いやああ爪削れた!!ウソでしょ?!てか血でてるしぃ…」
と思った矢先
なんかやらかしたらしい。
そりゃそうだ。段ボール切るのにその爪じゃあな。
「高木っちぃぃ~…。絆創膏…」
「持ってねえ。」
「知ってる。取りに行ってきてっ!」
「…お前面白がってんじゃねーぞ。」
人には言えない俺と幸人の関係。
それを知っている数少ない内の一人が、ここに居る。
今までただの一生徒としてしか見てこなかった渡辺だが、今は幸人との仲を修復させてくれた恩人として、そして恋人の親友として、世話になっている。
だからこんなからかわれるような事を言われても、嬉しそうに笑う顔を見せられたら怒る気にもなれない。
「仕方ねえな、行ってきてやるよ。」
「あざーーっ!」
学校で幸人と触れ合える時間はごくわずかで、正直全然足りない。絆創膏を取りに行くというほんのちっぽけな用事を、何より大切に思う。
例え保健室に他の生徒がいたとしても、顔を見て挨拶が出来れば普通に嬉しいし。
そんな事を考えながら、保健室に向かう。
扉の前に立つと、中から声が聞こえた。
「氏原先生うきうきしてるね?」
「そーかなあ?1週間後がめちゃめちゃ楽しみなだーけっ。」
声の主は大体わかる。
幸人と兎毛成だ。
俺の足音に気付いてないのか、幸人は楽しそうに兎毛成と話し込んでいるようで
「1週間後って文化祭?」
「そうそう!!」
「なんで?あいつと回るの?高木…」
「それはそうしたいけどお互い仕事もあるし。」
おい。
お前に頼まれれば絶対時間くらい作るのに。
結構冷静に返してんの、地味に傷つくぞ…。
「じゃあ何?」
「んふふー、それはね?実は……
僕の大好きな人がこの学校に来ますっ!!」
「え、なにそれ。高木――…」
「先生も好きだけどそうじゃなくてね?
……とにかく来るんだよ~!!!」
…もう、俺が惨めだから兎毛成、変に俺を立てなくていいから。
額に筋が浮き上がっているような気がして、これ以上は耐えられないと思った俺は
いつもはしないノックをして、にっこり笑って保健室に入ってやった。
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