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渡辺side‥
入口に立つと、指名の有無を聞かれたから高木っちの期待を裏切らないよう、しっかりとゆきちゃんの名を言った。
まっすぐ通される席は、勉強机をくっつけて同じく椅子を重ねただけなのに、その上に置かれたクッションやクロスが謎の高級感を出してて目がくらむ。
「いらっしゃいませー、失礼しまーす。」
でも、座ってきたのはゆきちゃんじゃなくて別の人。確かこの前同じクラスの子が格好いいと騒いでいた陸上部の先輩だ。
「今、指名のサチ君が他の席に着いちゃってるんで少しの間俺で我慢してくださいっ。」
いやいやいや、サチ?
どっかで聞いた名前なんだけど!
っていやそこじゃなくて。
ちゃんと源氏名まであるの…やば…。本格的じゃん…。
あっけにとられていると、ヘルプでついてくれた先輩も何をしていいのかわからないみたいでお互い困っちゃって、そんなこんなで時間を潰しているうちにゆきちゃん…もとい、”幸”が来た。
「…ご指名ありがとう。お待たせぇ心ちゃんっ。
こーら。ダメだよ?ルカ君。僕のお客さん困っちゃってたでしょ~?」
なんだかゆきちゃんのようでゆきちゃんじゃないこの感じ。
いつかの子持ちイケメンと話していた時も少し幼くてちょうどこんな感じだった。
これは”氏原幸人”じゃなくて”幸”…。ウチの親友とは別人…?
ルカ君って呼ばれた先輩がどこかに行って、それから”幸”がウチの隣に座った。
感覚はいつもより少しだけ近くて、動くと足と足がくっつくくらいの距離だった。
「今日はお疲れさまぁ!!心ちゃんのクラス、すっごく人気だったんだってね?みんなが噂してたよ。」
「そ、そうかな…えへへ、ありがと……っ。」
「タピオカドリンクだよね?僕、大好きだから行きたかったぁ!!」
「んん、まあでも明日もあるしさ!……た、高木っち居るし来て―――」
その瞬間、ウチの唇に幸の指が当てられた。
細くてきれいな指、少し冷たくて、その奥に見えた幸の顔は少し意地悪に笑っていて、でもどこか寂しそう。
「今ここで、他の男の話するの禁止ぃ~。
この時間だけは、僕と心ちゃんは両思いだよ?ね?」
「…………ハイ…。」
小さく頷くと、幸は嬉しそうに唇から指を離して、その代わりにウチの暇していた左手を軽く握った。
それに驚いて、グラスを口元に持っていく右手が震え、零れたぶどうジュースが口の端を伝う。
うっそ、やばい!シャツ白いのによりによって……っ
思わず目を閉じると、首まで伝わりそうだったジュースは顎で止まった。
手元にあったおしぼりで、咄嗟に幸が受け止めてくれたのだ。
…………これ無理。こんなゆきちゃん無理。っていうか聞かせない方がいいセリフも混じってたしこんなの高木っちに聞かせられない。やばい。これはやばい…。頭の中がぐるぐる回って酔ってもないのに顔は赤くて、そんなこんなでチェックの時間が来てしまってヘロヘロになったウチは2組の教室を後にした。
そのあと高木っちにいろいろ聞かれたけど、動画は誤作動で全く録れてなかったことにした。もちろんめちゃめちゃ怒られたけどウチと幸の”両思いの時間”は決して高木っちに言う事は出来ない。
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