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30分のRickyのステージングはあっという間に終わりを迎え、大盛況の中幕を閉じた。
あとから知ったことだが、今年のゲストライブはこの高校創立以来最大の盛り上がりを見せたらしい。
ただ、それを本人に伝えてしまうとまたドヤ顔が返ってくるのがわかりきっているから、俺だけの秘密にしておく。
「お疲れ。大丈夫か…。」
ステージから袖にはけた途端倒れ込むRickyを見下ろす。
「………これが大丈夫に見えるか。」
「いや、見えねえから心配してる。」
「そうか。なら運べ。」
「いや、救急車呼ばなくて平気か…おい…。」
浅い呼吸と真っ青な顔、全身脱力しきった姿を見て俺にはどうする事も出来ないんじゃないかと焦る。こんな時に幸人が居てくれたらまだもう少しは落ち着いていられただろうか。
…そんな事考えたって、幸人は俺が閉じ込めた。
自分のガキ臭い怒りをぶつけた俺が悪い。
どうしよう、どうしたらいい。
Rickyは話す事もしんどそうに薄く目を開けている。
俺が甘く見ていた。
多少なりとも彼の身体の事は理解しているつもりだったが、それは中学校時代の話で。
明らかに、症状が悪化しているのがうかがえた。
「……おい、高木。……落ち着け。寝れば治るから。」
息切れをしながらもなんとか俺を落ち着かせようと言葉を紡ぐ。
Rickyの声に先程よりは多少落ち着けたのか、背筋に流れ続けていた嫌な汗はようやく収まった。
「…寝てれば治るって信じて平気か?
保健室連れてくけど……やばかったらすぐに連絡よこせよ。」
自分とそれほど体格差の無い男を背負うのはかなり力が要るが、火事場の馬鹿力とでもいうのだろうか。この状況、誰にも見られてはいけない俺しか居ないこの場所では、俺がRickyを何とかしてやるしかなくて
少し遠回りをしながらも誰かと遭遇することなくRickyを保健室まで連れて行くことに成功した。
いつもより綺麗で整理整頓の行き届いた空間。
そこにRickyを寝かせて薄い布団をかけた。
「……悪いな。………最近いつもこんな感じだ…。」
「お前なあ…。そんな状態でいつまで仕事つづける気だ。」
「そんなの死ぬまでに決まってるだろう。」
「縁起でもないこと言うな。」
「……本気だよ。」
「おい、だから――――っ」
「もう行け。俺は適当に休んで迎えを待つ。」
「…………わかったよ…。」
これ以上何を言ったところで、頑固なあいつが自分の生き方を変える気がないのは知っている。
むしろ、ここまで来てしまったのなら最期まで好きな事をして生きるのも一つの方法なのかもしれない。
もし何かあったらすぐに連絡しろとだけ念押しして、俺は保健室を出た。
誰も来ることはないと思うが、一応念のため”外出中”の札を掛けて。
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