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おまけ 1
兎毛成side‥₁
特に興味もなかったけれど、物珍しさから少し覗いた体育館。
何曲歌ったのか、とか
どんな風に動いて、どんな曲だったのか、とか
細かいことは覚えてない。
ただ、耳には今も響いてるんだ。
透き通って、感情的に張り上げる声も
少し掠れた裏声で、切なく響く高音も。
Rickyの影が消えてもなお、
館内の拍手は鳴り止まなかった。
もちろん僕も、手を叩き続けた中の一人。
まだ興奮が冷めぬうちに、保健室へ足を運ぶ。
一緒に見ていた佐々木は気付くともう居なくなっていて
僕の話を聞いてくれるだろう氏原先生の居る場所へ走った。
外出中の札が掛かる扉を静かに押す。
この札は氏原先生が氏原先生の彼氏と二人きりになるために使う裏技だってことくらい知ってる。だからきっと氏原先生はいる。
そんな僕の判断は間違っていたらしい。
正面のデスクに氏原先生の姿は無かった。
静かな室内に空調の音だけが響く。
でも、ぐるっと一周見回すと、カーテンも引かずベッドに寝転ぶ影が見えた。
見たところ制服ではないから生徒じゃないっぽい。
近付くにつれてはっきり見えて来る姿に目を見開いた。
身長が高くて
僕よりずっと細く
色白ですらりと伸びた手足
真っ黒い髪はワックスでしっかりセットされていて
長いまつげ、高い鼻、ふっくらと柔らかそうな唇。
まるでお伽話に出てくる、白馬に乗った王子様だった。
一瞬でも目を離すのが惜しいくらい綺麗な男の人。
じっとその姿を凝視していると、男の人は
ぱちっと目を開けた。
…綺麗な二重に真っ黒な瞳
眠る姿も勿論綺麗だったけれど、目を開いた姿も相当なもので
しっかりと重なってしまった視線を逸らせずにいると
男の人が口を開いた。
「………………何だ。」
「……………っ?!」
それは、つい先程涙を流して聴き込んだ
透き通った色気を纏うあの声だった。
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