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開始時間の20分前でも、すでに何人かの教師は集まっていた。
席の別れ方を見て前回同様”吸う方”と”吸わない方”でテーブルが分けられていることを瞬時に察して勿論俺と幸人は”吸う方”のテーブルへ向かう。
そんなに席が離れているわけでもないのだが、そこはやはりマナーというか、モラルに反さないように気を付けるべきところだ。
喫煙者には住み辛い国になったと思う。
そして迷うことなく俺は幸人を隅の席に押しやった。
理由は簡単だ。
俺以外の誰にも幸人に触れてほしくないから。
「お疲れ様です~!」
「こんばんは、お疲れ様です。」
隣で笑みを浮かべて挨拶を交わす姿を見るのも苛つくというのに。
しかも相手は兎毛成のクラスの担任で、何かしら事あるごとに幸人に接近を試みる乳だけが取り柄の糞女。
俺が勤め始めてから一度も喫煙所で一緒になったことなんてないというのに、当たり前のようにこちら側の席に座りやがる。
本当に、幸人を隅に置いておいてよかった。
それでなきゃあいつのこれ見よがしに匂わせたキツい香水の香りが幸人にまで移ってしまうところだった。
「でも最近本当に兎毛成君は変わってきて、今週なんてほとんどクラスで過ごせたみたいなんです~!どれもこれも氏原先生のお陰ですぅ。」
当たり前のように幸人の向かいの席を確保した教師Aが口を開く。
仕事関係の話になれば俺が口を挟む事が出来ないのを良い事に、教師Aは身を乗り出して、はしたなく谷間を見せつけるように幸人に上目遣いで言葉を連ねた。
「兎毛成君の件に関しては、僕は何もしてませんよ。
例の、転校生の子と仲良くしているみたいですし。」
対する幸人はさも興味なさげにポケットから煙草を取り出すと、一緒に入れてきたはずのライターを探し出した。
「…あ、忘れたかも。」
嘘つけ。俺は家出る前にしっかり手に持ってんの見てたぞ。
しかも、なんなら落とすかもとか壊れるかもとか言って普段からライター2本は持ち歩いてんの知ってるからな。
「あっ、ライターですか?それなら―――…。」
「高木先生、持ってる?」
教師Aが慌てて大きなバッグを漁る中、そんなものには目もくれずに幸人は俺の服を引っ張った。
「あー、あるけど。」
「んっ。」
俺がライターを取り出すと、幸人はそれを受け取るための手ではなく、口を突き出した。
タバコを咥えた可愛い唇。
付けろってことかよ…。
わざと少し離した距離で火をつけると、
幸人は一瞬困ったようにこちらを見た後、俺の脚に手をついて、火のある場所まで身体を寄せた。
頭を撫でたくなるのを必死に抑え、教師Aに視線を移すと、片手に蝶の柄の付いたライターを持ったまま固まっていた。
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