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幸人の様子がおかしい事には気づいてる。
大方、俺とナル先生が話していた事を気にしているんだろう。
でもこれは俺自身の問題だから、幸人を巻き込むわけにはいかない。
察しの良い幸人だから。
お人好しの幸人だから。
優しい幸人だから。
少しでも気を抜けば、幸人に甘えて何1つ解決しないまま逃げてしまうに決まっている。
それはできないんだ。
俺がきちんと幸音先輩に全てを謝って、許してもらって、そうすれば初めて幸人に心から思いを告げることができるから。
今までも上っ面の気持ちなんかじゃなかったが、
つい渋ってしまうのはやっぱり、幸音先輩のことを未だ引きずっているからだろう。
けれど、もし幸音先輩が許してくれなかったら。
そもそも俺と会うことを拒絶されたら。
そんな不安が拭いきれず、眠れないまま朝が来て
半ば意識が朦朧とするままこうしてまたタバコを吸った。
「…康明、もしかして寝てないの?」
ほら、こんな風に俺の少しの違和感にも簡単に気が付いてしまう幸人では、素人の演技が通るのも時間の問題。
なるべく考えを読まれないよう目を合わせずに
なるべく口が滑らないよう自分から話題を出すことを控えるように。
それを幸人がどう思うのかはわからないが、
たまに悲しそうな顔をするだけで、
いつも通り笑ってくれるからその優しさに甘えてしまう。
幸人なら大丈夫だ、幸人は俺よりずっと大人だから。そう自分に言い聞かせているうちに、自分の中でいつしかそれは真実に変わっていく。
1日、2日と日が経つうちに、俺たちの間には見えない壁が立ちふさがっていくように思えた。
眠れぬ夜を繰り返す毎日は、すごく辛くて。
いっそのことナル先生から貰った紙を燃やしてしまって
全てをなかった事にしたい
逃げてしまいたいと思った。
それでも何とか耐えることができたのは、
幸人が毎日作ってくれる朝ご飯とお弁当、
時間ができたとき相変わらず入り浸ってしまう保健室、
そこで俺を温かく迎え入れてくれる養護教諭の存在があったからだ。
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