アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
296
-
氏原side‥₂
「なぁ、コレ見に行かねぇ?」
「………え?」
「嫌なら別に―――」
「行く。行かせて。」
「…おー。」
こんな会話になったのは、のんびりと
康明の家のリビングでくつろいでいる時の事だった。
大した理由ではないけれど、テレビをつけてたまたまやっていたCMを見ていたら、
某遊園地のイルミネーション映像が流れ、
無意識のうちに僕が「綺麗…。」って口に出してしまったのが始まり。
そしたら、普段なら無視するか、
そんな混んでる所に行く人の気が知れない
なんて屁理屈を言い出す康明が、珍しく僕の独り言に乗ってきたのだ。
やっぱり様子がおかしい。
なんて頭のどこかで思いながらも、康明と久しぶりに2人きりで外出できるという喜びが勝り、少しばかり高まる鼓動を感じた。
「25日の夜な。」
いつがいい?と聞かれても
「康明の気分に合わせる。」
が口癖の僕を知る康明は、はじめからそんな無駄なことは聞かない。
早く決めた方が自分も僕も考える手間が省けるから。
12月25日。
今年のクリスマスは日曜日だ。
きっと、CMで流れるような大きな施設では、
沢山の人が賑わっているに違いない。
そんな場所に康明が足を運んでくれるだなんて、
夢みたいで、どうしても浮かれてしまう。
「金曜から家泊まるだろ?」
「あ、うん……いいの?」
「いいも何もいつもの事だろ。何言ってんだ。」
「う、うん…まあ。」
変な奴。
そういって席を立つ康明の後を追い、僕も隣で煙草を吸う。
平日に毎日康明の家に行くことはやめた。
忙しいからと適当な理由を作って。
本当は嫌われないために距離を置いただけだけど。
泊まりを断られた日から、距離感にはかなり気遣っている。
別に仕事の一つや二つ、作ろうと思えばいくらでも作れるから、康明もきっと不思議には思わないだろう。
代わりに、仕事という言い訳の利かない週末は
康明の家で過ごすのが当たり前になった。
この”当たり前”も、いつまで続くのかわからないが。
今週で終わりかもしれないし、来週で終わりかもしれない。
もしかしたらこうして隣でタバコを吹かしているこの瞬間に突然終わりを告げられるのかもしれない。
いくつもの不安が僕に重くのしかかり、つい「いいの?」なんて許可を求めてしまった。
これでは康明に不振がられてしまうじゃないか。
もっと演技に集中しないといけないのに。
康明に捨てられない様に、僕は康明の思う通りの幸人で居ないといけないのに…
心の奥底では、僕のこんな不安定な気持ちに気が付いてほしいとも思うんだ。
もっと心配してほしい。
もっと構ってほしい。
”好きだよ”と一言だけでいい。
僕に確かな居場所を与えてほしい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
299 / 448