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最悪な一日①
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『都築の顔の痣見た?また喧嘩したのかなぁ』
『毎日毎日本当に懲りないよね』
後ろ指を指される、と言うがその噂の本人は至って近くにいるものだ。
わざとらしく音を立てて教室の扉を開けると、シンと静まり返り、また賑やかな平常が戻ってくる。
何も無かったかのように。
……勝手に言ってろ。
実際問題、俺は人と喧嘩なぞしていないし、したことも無い。
所謂『不良』とレッテルを貼られるような迷惑行為は学校でもした事が無いのに、毎日毎日どこかしら怪我をしてくる上に友達と呼べるような奴も居ない為か、勝手に不良のイメージをつけられている。
しかし、俺にとってこの環境は、一人になれるから丁度よかった。
物心ついた時から恋愛対象は男で、それが大っぴらに言える訳もなくずっと胸の奥に閉じ込めてきた。
思春期のこの時期は俺だけでなく、回りも恋愛の話題とやらに敏感になる。ましてや『男が好き』なんて恰好の的だ。
バレてしまうくらいなら人と関わらないでおこうと思っていたから、向こうの方から避けてくれることは好都合なのである。
自分の席に座るまでの数秒、嫌な視線を感じたがまぁいつものことだ、と手持ち無沙汰でやる事も無く頬杖をついた。
ふとまだ痛む顔の痣に触れた。
死ぬほど忘れたい昨日の出来事が脳裏に蘇ってきて、慌てて首を振った。
違うことを考えよう、何か別の──
「都築くん」
聞いた事のある、澄んだ声。
再び水を打ったようにしんと静まりかえる空間。
……現実はそこまで上手くいかないようだ。
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