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上書き②
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「……都築くん、起きて」
「ん………?」
深い眠りの世界に入っていた所を揺り起こされ、あっという間に現実世界に引き戻された。
大人しく待っていたはいいが、やることも無く飽き飽きしてしまった俺はいつの間にか眠っていたようだ。
夕日の橙が、真堂の顔を照らした。
冷徹でも、畏怖も感じない優しいその表情に、ギョッと驚いたが目を逸らす。
「寝顔、可愛かったよ」
「ふざけんな…いつ戻ってきたんだよ」
「んー、10分前くらい?」
つまり、10分ほど俺は寝顔を見られていたということになる。
隙を見せてはいけない彼に、まんまと油断して気を抜いてしまった自分に苛立ちさえ覚える。
「さ、行こっか」
「……どこにだよ?」
「んー、秘密の場所」
含みのある言い方をされるから、どうも緊張してしまう。
秘密の場所?何だ?
会員限定のバーか?完全防音のプレイ部屋か?
…いや、こいつはただの学生だった。三好に振り回され過ぎて、通常の思考が出来なくなっているのが物悲しい。
「そんなに緊張しなくてもいいよ」
真堂の唇が額に触れる。
息をするように触れてくる彼に、文句を言う暇すら無い。
一つ一つに文句を垂れていたらキリがない、と呆れや諦めに近い溜め息をついた。
学校から歩いて数分。
住宅街の中にポツンと佇む公園が、どうやら目的の『秘密の場所』らしい。
意気揚々とベンチに向かい、隣を指差した真堂に続いて俺も腰を下ろした。
暫しの沈黙。
錆びたブレーキ音を立てて止まる自転車、それから。
どこかで誰かが立て付けの悪い窓を開けているらしい。ガタガタと騒々しい音が、そんなに近くでは無いのに、この静かな状況では耳に付く。
「……この前のこと、聞いていい?」
先に沈黙を破ったのは真堂だった。
「あの人とは一体どういう関係なの?」
「…見りゃ分かんだろ、セフレだよ」
今更言うのを渋っても仕方ない。
躊躇うことなく言ってのけると、心做しか真堂が驚いていた。
「じゃあ都築くんは男が好きなの?」
「………………ああ」
「その人のことは好き?」
「…………」
答えられなかった。
痛いことをされたり暴力的なところは勿論嫌いだ。
でも、好きという感情とはまた違う気がする。
「わかんね……」
「そっか、じゃあ」
ネクタイを引っ張られる。
重ねるだけのキスをした後、ゆるりと舌先が唇を啄いて反射的に薄く唇を開けた。
熱い舌が口内を悪戯に這いずり回る感覚に、息が漏れる。
慌てて手をついたのは真堂の胸で、目いっぱい押すが背中と後頭部をがっちり支えられているためビクともしない。
「……んぅ、ふっ…」
しつこく舌を絡めてきたり粘膜を舐られる感覚に、自分の状況や立場を忘れてつい気持ちが昂ってしまう。
ハァ、と熱い吐息が途切れ途切れに向こうからも聞こえてきたその時、真堂の顔がゆっくりと離れていった。
どちらのかも分からない唾液の糸が引いて、それを拭う仕草でさえ様になるのが腹立たしい。
「都築くんが僕のことを好きになるチャンスはあるってことだ」
そうあっけらかんと言った。
ニコニコと目を細める彼に、一体どうしてそんなに自信があるのかと訊ねたいところだ。
俺が真堂のことを好きになる?
笑わせんな。
お前の遊びに嫌々付き合っているだけなのに。お前は好きだとかどうだとかそんな馬鹿馬鹿しい事を考えていたのか?
「……ありえねえ」
「有り得るよ!だからさ、僕のこといっぱい教えるから都築くんのこともいっぱい教えて!知りたいんだ、君の色んなこと」
調子付いて『モチロン、こっちのことも』と下半身を撫で上げてきたので思い切り小突いてやった。
エロ親父かよ、気持ち悪い。
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