アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
甘い君①
-
あれから数日。
いつ俺に飽きるのだろうと思っていたが、真堂はますます過剰に関わってくるようになった。
例えば、今だって……
「はい、あーんして?」
「……………………おい、やめろ」
昼休み、教室のど真ん中。
嬉しそうに頬を緩めながら、弁当のおかずをつまんで俺に押し付けてくる真堂は、あーんして食べさせようとしている。
そんな事死んでも絶対にしたくないのに。
手のひらで圧の強い箸の先を押し返すと、『これ嫌いだった?』と首を傾げてくる。いや、そうじゃなくて。
「人前でそんなこと出来ねーって…」
「何恥ずかしがってんの?僕ら付き合ってるのに」
「…あのなぁ、俺もお前も男なんだって。そういうのは普通男女でやるんだよ」
真堂の見せつけるように繰り広げられる過剰なスキンシップに、戸惑ったり全力で拒否する俺…という奇妙な光景。
急激に距離が縮まったように見える俺たちを、クラスメイトは好奇の目で見ていた。
「やだ、みんなに見せつけてやらないとナオが取られちゃう」
「誰にだよ……」
「気付いてないの?
さっきからキャーキャー歓声上げてるの、君に対してのもあるんだよ」
真堂の視線を辿るように、固まりになって黄色い声を上げている女子たちを見ると、耳を劈くような悲鳴が上がった。
『都築くーん』だなんて甘ったるい声で手を振ってくる奴すらいる。
「……興味無い、面倒くさいだけだ」
「ナオは男好きだもんねぇ」
「黙れ」
相変わらずおかずを勧めてくる真堂を無視して、菓子パンの袋を開けて一口齧りつく。
不満そうにしているが知ったこっちゃない。
こいつにだけは気を許してはいけないから。
「あ、口にクリームついてるよ」
指でクリームを拭ってこようとしたので、その手を振り払い自分で舐めて取ると、真堂ははっと目を見開かせた。
唇は何を思っているのか弧を描いていて、言い知れぬ恐怖を感じる。
「……何」
「何でもないよ、ただ…」
そして、何か言いたげに黙りこくる。
これ以上俺から詮索はしないが、気持ち悪い。
真堂という未知の存在が考え事をしてるといったら、全てよからぬ事だと思ってしまうから。
気のせいだと、思いたい。
背筋に伝う嫌な汗も、まだ5月だというのに蒸し暑い今日のこの天気のせいにしたいところだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 30