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リアル⑧
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遡ること数時間前。
僕はナオとの下校の時間を割いてまで、とある相談を友人に持ち掛けていた。
「で、どうしたらセックスまで持ち込めると思う?」
「…お前は何の話をしているんだよ」
目の前で怪訝そうな表情を浮かべているのは、友人の西 陽平という奴だ。
西とは中学時代からの付き合いで、唯一彼に僕の本性を知られている。
勿論、ナオと付き合っていることも。
だからこそ、包み隠さず何でも話をしているのだが。
「オブラートに包むって言葉知ってるか?」
「うるさい。これは急を要することなんだよ」
「焦るもんじゃねえだろ……」
「焦るよ!あんな綺麗な子、いつ誰に奪われるか分からないだろ」
「ふん、真堂は自分に自信が無いんだな」
「なっ……」
返す言葉が見つからない。そう言われてみれば図星かもしれないからだ。
今まで僕に好意を寄せてくる子はたくさんいた。
僕が甘い言葉を囁けば、面白いほど向こうから勝手に落ちてくるから、焦りなど感じた事は全く無かった。
だからこそ、僕に微塵も靡かないナオという存在を、攻略出来ずにいるのだ。
「付き合ったのも半ば強制的?つーか脅しに近かったもんなぁ」
「あ、あれはそうでもしないとOKしてくれないと思って……」
「あーあ、都築可哀想に……」
「ちょっと!ふざけないで真剣に聞いてよ」
そう言うと、背もたれに背中を預けて脱力していた西が、途端に姿勢を正して僕に向き合った。
「真剣なら、どうしたって束縛しちまう理由をちゃんと都築に説明しろよ」
「……」
「理由があるんだろ」
確かに、僕は束縛や痛みでしか気持ちを表現出来ないと、ナオに伝えたことがある。
それには幼少期の出来事に要因があった。
しかしこれは、僕にとってある意味弱みであり、内に秘めておきたいものでもあり、いくらナオと言えど軽々しく言う勇気は無かった。
「……怖いんだ、それを言ったら嫌われるんじゃないか、って」
「そうか、じゃあ都築とはそれまでの関係にしかなれねーな」
「っ……」
「とりあえず今の関係を変えたいなら、お前が変わるしか無いと思う。
……まあでも、人格だったり性格的な部分はすぐ直せることじゃないから何とも言えないけどさ、一回都築と話してみるのもアリじゃねーの?」
「…そうだね」
「うかうかしてたら、まじで誰かに取られるぞ」
「何それ、どういう事?心当たりがあるの?」
「さあな。
じゃ、俺バイトだから。また明日!頑張れよ」
「あ、ちょっと待っ……!」
西の含みを持たせたような言い方が妙に引っかかった。
そうして居ても経ってもいられずその足でナオの家へ向かったことが、事の始まりだ。
初めて対面した、ナオの元セフレは『俺は諦めないから』と最後に言って消えていった。
─『誰かに取られるぞ』
西の言葉が脳内で何度も繰り返される。
こういうことか、と僕は再びどうしようもない焦りに襲われた。
どうすればいい?
誰かに取られるくらいなら、いっそのこと身体だけでも奪ってしまいたい──
「……真堂」
僕の下で赤い目をしたナオが複雑そうな表情で名前を呼んできた。
「あ、ごめん…僕」
考え事をしていた、と言おうとしたが、途端に目を伏せられ、覆い被さる僕の体を押し退けて『シャワー借りる』とだけ言って浴室へと行ってしまった。
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