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「ふわっ…あ~あ」
「おっきな欠伸だね。マジシャン」
「だってラバー、もうずっと同じこと見てると飽きてこない?」
僕は眼の前で繰り広げられている惨劇に、飽き始めていた。
二人の男性が、複数の男達に代わる代わるボッコボコにされている。
ここは港に数多くある倉庫の一つ。そこで行われているのは、リンチ。
時刻はすでに日付が変わっており、倉庫内には窓から差し込む月明かりだけが光となっている。
まっ、僕達にとっては明る過ぎる太陽の光より、こういう薄暗さの方が慣れているし良い。
「人間、慣れって怖いよねぇ。どんな惨劇でも見慣れると飽きる」
「オレはそんなことを言うマジシャンの方が怖いと思う」
そう言いつつ、ラバーは手で隠しながらも欠伸をする。
「あっ、ラバーも欠伸した」
「…んだってもう眠いよ」
リンチを始めて、何時間経ったっけ?
確かまだ夕日が海に沈む前だから………かなり経っているな。
僕は倉庫内の積み上げられた木箱の上に座っていて、ラバーはドラム缶の上に座っていた。
最初は二人とも立っていたけど、時間が経つにつれて、疲れて座ってしまった。
けれど誰も咎めない。
僕とラバー、そしてリンチを受けている二人以外は、リンチをしている側だからだ。
「ねぇ、デス。まだやんの?」
ラバーがいい加減痺れを切らし、腕を組んでリンチを見続けているデスに声をかける。
「―そろそろ終わりにするか」
デスの一言で、二人に群がっていた連中はすぐにその場から離れる。
巻き添えをくらわない為に。賢く、そして素早い判断だと、ぼんやりした頭で思う。
デスは床に血まみれになって伸びている二人に近付いた。
そして近くにいた一人の頭を無表情で容赦なく踏み付ける。
「ぐっ…」
「あっ、意識あった」
驚いたラバーが眼をパチクリさせた。確かにビックリだ。
両手両足の骨は折られて、爪は剥がされた。
腹を何度も蹴られたので、肋骨も折っているだろうし、内臓も潰れただろう。
顔も床に何度も叩き付けられ、すでに人間の原型は留めていない。
他にも拷問の如く長時間いたぶられ続け、とっくに意識なんてないと思っていた。
「トランプごときにスパイの真似事をされるとは、な」
デスが踏んでいるのは、僕達が属する組織の、いわゆる下っ端の小物。
だがその正体は商売敵のスパイだったりする。
「でもデスってばそれを知った上で、利用するからスゴイよね」
ラバーが感心したように言う。
確かに敵のスパイと分かっていて、仲間にした。
その上で利用して、敵本体を叩き潰したのは褒められるだろう。
そして今、根元を絶とうとしている。
デスは男を踏み付けたまま、こっちを向いた。
「マジシャン、ラバー、来い」
「はいはい」
「は~い」
お互い気の抜けた声で返事をして、座っている場所から飛び降りた。
「早く帰りたいんだったな。なら、コイツら始末しろ」
「最後は人任せですか」
「いいじゃん。やっと帰れるんだから」
ラバーは腰から刃渡り二十センチほどのサバイバルナイフを抜いた。
そして何の躊躇いもなく、床に倒れて身動き一つしない男の後頭部に振り下ろした。
ドスッ
ビクビクッと何度か痙攣した後、男は動かなくなった。
床に血が静かに広がっていく。
「マジシャン」
「分かっていますよ」
次はお前だと言わんばかりにデスに急かされ、懐から銃を取り出す。
デスが足を避けると、男と眼が合った。
悲しそうに、でもどこかほっとした色を浮かべている。コレでやっと、苦痛から解放されるのだ。
そういう表情を浮かべるのも、理解できる。
僕は彼に向って、微笑んで見せた。
「それじゃあ、さようなら」
ドンッ
銃弾は頭に命中。
瞬く間に血と脳が溢れ出す。
さっきよりも血の臭いが濃くなったな。
デスは男達をリンチしていた連中に視線を向ける。
「お前達、後始末をしろ。行くぞ、マジシャン、ラバー」
「はーい」
「はあ、やっと帰れるぅ」
僕達三人は倉庫を後にした。
外に出ると、潮と夜の匂いが風に乗って感じられる。
夜なのに大きな満月が浮かんでいるせいか、やたら明るく感じられた。
けれど光が強ければ、闇は余計に濃くなるというもの。
特に僕達は仕事が闇であり、影でもある。
それに着ている服装も三人とも黒尽くめだから、余計に闇を浮き立たせてしまう。
けれど中身は人間なので、三大欲求の一つである眠気には勝てない。
「う~ん、明日は寝坊しないようにしないと」
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