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「うん。それとホラ、太陽が昇ったらね?」
僕が意味ありげに笑うと、ハッと気付いたように眼を見開く。
「あっ…ああ、ゴメン。ユウマ」
「うん、レン。気を付けようね」
役名で呼び合うのは、太陽が沈んでいる間だけ。
昇れば名前で呼び合うのが、暗黙のルールだった。
「ちなみにイザヤ、今日は夜に予定はありませんか?」
「特にないな」
「分かりました。それじゃあそろそろ着替えようか、レン」
「あっ、うん」
レンは慌てて残りの朝食を口に詰め込み、オレンジジュースで流し込む。
二人で各々二階の自分の部屋に入った。
今通っている高校のブレザーの制服に着替え、等身大の鏡の前に立って見る。
黒い髪は少し伸びてきたかな?
茶色の眼は赤みが少し滲んでいるから、目薬をさしておこう。
昼間は学校、夕方から夜にかけては仕事、そして深夜にはデスの相手をしたものだから、体に疲れが残るよなぁ。
僕はわりと昼間働くことが多いから、肌の色はレンほど白くない。
体つきは中肉中背で、顔だって平凡的。
まあどこにでもいそうなタイプだからこそ、『マジシャン』をしていられるんだけどね。
カバンを持って扉を開けると、隣の部屋の扉が開いてレンが出てきたので、一緒に一階に下りた。
「じゃあ行ってきますね、イザヤ」
「行ってくる、ケイト」
「ああ」
デスこと伊座夜いざや慧斗けいとに声をかけ、僕とレンは家を出た。
「あ~あ。高校生なんてかったるい。とっととアイツから情報を貰って、早く辞めたい」
「こぉら、外で何を言う」
家の中でなら何を言っても良いが、外では誰が聞いているか分からない危険性が高いのに。
頭をコツンと叩くと、レンは唇を尖らせ、下を向いた。
「だって朝起きるの苦手だし、人の多い所も苦手」
低血圧のレンは毎朝起きるのが辛そうだ。
「まあ朝起きるのは大変だよねぇ。しかも仕事は夜遅くまでやらされるし」
思わず肩を竦めた。
どんなに疲れたと訴えても、デスの側近である僕達は共に行動させられる。
―彼の命令には逆らえない。
ふと視線を感じた。
視線の方向を見ると、レンが僕を見ている。
「ん? どうかした?」
「ユウマ、昨夜ケイトの相手させられたんだろう? 体、平気なのかよ?」
…心配してくれるのは嬉しいのだけど、朝から聞いてほしくないことだった。
しかも場所は家の外、人が少ない時間帯で本当に良かった。
「んっ、まあね。僕の体のことは、彼が一番よく知っているから」
どういうふうに触れば昂ぶるのか、そして体に負担をかけないのか、彼は僕以上に知っていた。
「付き合い、長いんだっけ?」
「僕が八歳の頃からだから、もう十五年の付き合いになるかな?」
「長っ! …あっ、でもオレも十一の時に出会ったから、十年は経つんだよな」
「そうだね。長いねぇ」
でも付き合いが長いからと言って、僕は彼の全てを知っているわけじゃない。
そのことが寂しくもあるけれど、楽でもある。
…複雑だな、僕の心は。
「とと…、そろそろ人が多くなってきたし」
「分かってるよ。ちゃんと演じるって」
溜息をつくレンは、一見はキレイな十代の男の子に見えた。
太陽の光に透けて、色素の薄い茶色の髪は金髪に見える。
夜の仕事をしているせいか、肌の色もそこら辺の女の子に負けないほど、白くて肌理が細かい。
二十一歳になるけれど、こうやって高校の制服を着ていても違和感は全くなし。
…まあ高校には、年齢を詐称して通っているワケだけど。
僕も二十三歳だけど年齢を誤魔化し、高校生を演じている。
僕の顔は一応高校生でも通用するらしい。
平凡的な容姿だし。
ちなみにレンは高校一年生で、僕は高校二年生、兄弟という設定だ。
名前の方は僕は『神無月かんなづき遊真ゆうま』と名乗っていて、レンは弟なので『神無月恋れん』。
通っているのは親が金と権力を持つ、お坊ちゃん達が集まる私立の男子高校。
僕とレンは目的があってこの高校へ潜入している。
校門をくぐると、その目的が僕らに声をかけてきた。
「おはようさん、神無月兄弟」
「あっ、鷹近たかちか、おはよう」
「おっはよー、鷹近。会いたかったぁ」
レンは満面の笑みを浮かべると、目的こと鷹近に抱き着いた。
「おいおい、朝っぱらから過激だな」
「だってぇ、会いたかったんだもん」
人の多い所で、人目もはばからずにイチャ付き始める。
コレにはちょっとドン引きしてしまい、僅かに二人から距離を取った。
しかしすぐに鷹近が僕の様子に気付く。
「あっ、遊真。何引いてやがる」
「いや、親友と弟の愛が眩しくて」
「妬くなよ」
「どっちにだよ?」
僕と鷹近がしゃべっている間に、レンは一瞬イヤそうに顔をしかめた。
…本当にイヤなんだろうな。
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