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鷹近は髪を金髪に染め、耳にピアスをし、制服を着崩していた。
いわゆるその…チャラ男タイプ。
臭い香水の匂いも、鼻につく。
レンは大人の男性に慣れているせいもあり、年下のこういうタイプは大っ嫌いなのだと、仕事はじめに言い切っていた。
仕事じゃなきゃ、殺したくなるほど嫌いなタイプらしい。
なので助け船を出すことにした。
「それより早く教室に入らないと。ホラ、恋。放してやりなさい」
「ぶぅ。じゃあ鷹近、後でね」
「ああ、恋」
レンと鷹近は軽くキスをすると離れた。
そして学年の違うレンは、僕達とは校舎が違うので別の方向へ向かう。
「恋、可愛いよなぁ。遊真の弟とは思えないぐらい純粋だし」
「アハハ…」
うっとりとレンの後姿を見つめる鷹近を見て、僕は乾いた笑いしか出てこなかった。
―きっとレンは校舎に入ってすぐトイレへ駆け込み、顔を洗っているだろう。
しかも洗顔フォームで。
「なぁなぁ。今夜、恋借りていいか?」
「えー? どこへ連れてく気だよ?」
「行きつけのクラブ。恋のこと、見せびらかしたくてさ」
「人の大事な弟を、危ない場所へ連れて行く気ですか? アンタ」
「大丈夫だって。ちゃんとオレが守ってやるからさ!」
頼もしげに胸を張るのはいいが……現実を知らないって、本当に酷だ。
「…まっ、それなら良いけど」
「ホントか? 一緒に住んでいる叔父さんに後で何か言われたりしない?」
「叔父さん…ああ、イザ…じゃなくて慧斗さんのことか。叔父さん、今晩は仕事で遅くなるって言ってたから、大丈夫」
イザヤは僕とレンの叔父と言って、鷹近に紹介している。
イザヤは見た目三十代前半に見えるので、そういう設定にしていた。
「マジで? よっしゃあ! 今日の昼食、奢るぜ親友!」
僕の肩に腕を回して、鷹近は嬉しそうに言った。
「じゃあとびっきり高いのをおねだりするよ」
「任せとけ! 払うのはどーせ親父の金だしな」
いや、そこは胸を張るところじゃないよね?
呆れながらも僕はツッコまない。
だって、それが親友ってものだろう?
高校の生活は、レンが言うほど悪くはないと思う。
確かに周りにいる人達は僕達より年下で、しかも頭の悪そうな会話ばかりする。
けれどそういう空気と空間が、案外居心地が悪くなかったりする。
何気なく友達としゃべったり、授業を受けたり。
僕が八歳になるまでは、ごく自然で当たり前のように過ごせていたこと。
僕が八歳の時、か…。
―あの事件が、僕の全てを狂わせた。
八歳になるまで、僕は自分の両親は普通の人だと思っていた。
父親は会社のサラリーマンで、母親は専業主婦。
住んでいる家は一戸建てで、特に変わったところなんてなかった。
正確にはそういうふうに二人がしていたと知ったのは八歳の時。
あの夜、両親は緊張した面持ちをしていた。
何でも大切な客が来るからと言って、僕は階段の裏の隠し部屋に入れられた。
この隠し部屋は扉も小さく、中も子供が三人も入れば狭くなるほどの小さなスペースしかない。
母親に自分達が開けるまでは絶対に出てはいけないと、きつく言われた。
二人は険しい表情のまま扉を閉め、鍵まで閉めた。
そして扉の前に棚をスライドさせれば、部屋は完全に隠される。
隠し部屋には窓や電気などなく、僕のおもちゃがいくつかあるだけだった。
部屋に入れられる前にトイレまで済まし、飽きないようにと懐中電灯とマンガ、お菓子にジュースまで置かれた。
時々こういうことはあった。
けれど僕は子供だったので、意味がよく理解できていなかった。
いつものことだと思い、僕は大人しく待つことにした。
ここは防音壁でできており、中からも外からも音が漏れないし聞こえてこない。
温度もちょうど良くて、僕は待ち疲れて眠ってしまった。
けれど物音で起こされた。
しかもドアノブをガチャガチャっと激しく回す音で、だ。
「…っ!」
両親ではないと、すぐに気付いた。
けれど逃げる所なんてどこにもない。
僕はそれでも扉から離れようと、部屋の隅に移動した。
やがてドアノブは回されなくなった。
しかし次の瞬間、拳銃でドアノブは破壊されてしまった。
もしあの時、部屋の隅にいなかったら、体のどこかに当たっていただろうな。
そして扉を蹴り飛ばし、顔を覗かせたのが…イザヤだった。
「こんな所に何を隠しているのかと思えば、子供か」
黒い革の手袋をしたイザヤは、僕の腕を掴んで引っ張り出した。
「やっ!」
廊下には数人の黒尽くめの男達がいた。
その中の一人が、僕とデスを見て眼を丸くした。
「デス、その子供は?」
「隠し部屋に隠されていた」
「なるほど。いくら組織の裏切り者とは言え、親心は持っていたわけだ」
デスと会話をしたのは冴えない中年の男性。
けれど後に、テンパランスと呼ばれる組織の幹部であることを知る。
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