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それに彼に魅入ってしまった僕としては、どんな形であれ傍にいられるのは嬉しかった。
夜の相手に呼ばれることもあるし、そこそこ充実した生活だ。
今も仕事中ではあるけれど、この平和な環境に慣れてしまってきている。
平穏な日々は心安らぐものだから。
「…とは言え、あんまり長引かせるのはダメだよなぁ」
休み時間、僕は友達と楽しそうにしゃべっている鷹近を見ながら呟いた。
今回の目的は、鷹近から父親の住んでいる邸の設計図を手に入れることだった。
その為に僕は彼と同じクラスになり、レンは僕とは兄弟という設定で一学年下になった。
鷹近の父親は代議士。
それも代々続いているというのだから、恐れ入る。
けれど彼の代で終わりそうな予感がするな。
「悪いコじゃないんだけど」
思わず失笑してしまう。
単純で扱いやすい。
そのおかげで近付きやすくもあり、レンがちょっとその気を見せただけで容易く堕ちてしまった。
まあレンはラバーだから、しょうがないと言えばしょうがない。
彼の本来の仕事は、色仕掛けでターゲットに近付くこと。
その美貌を活かし、相手をその気にさせることが彼の役目だった。
そして僕は言葉巧みに相手に近付くことが役目。
話術を持って、情報を引き出すことを得意としている。
僕達の仕事内容は、殺しよりも情報収集が多かった。
なので一部の幹部からは、皮肉を込めて詐欺師と呼ばれたりもする。
…でも僕が引っ掛かるのはそこじゃない。
イザヤの夜の相手をしている僕が言うのもなんだけど、レンとアイが相手をするのはお互い同性のみというのがなぁ…。
アイはレンとは正反対のタイプで、見た目もレンが洋風の美少年なのに対し、アイは和風の美少女。
しかも真面目で固い性格をしているので、なまじ頼りない男なんかは毛嫌いしているぐらいだった。
…二人とも性癖に問題があるように思えるが、僕が僕だしな。
ふと鷹近が僕の視線に気付いたのか、明るい笑顔で手招きをする。
「よぅ、遊真。何シケたツラしてんだ? お前もこっちに来て、話にまざれよ」
「うん、今行く」
―設計図を手に入れたら、僕達は彼の父親を殺す。
そしてこの学校を辞める。
それで仕事は終了だ。
そろそろ潜入期間が終わってしまう。
デスは表には出さないものの、苛立ってきているだろう。
彼の怒りを買うことは、生きている間はしたくないものだ。
肩を竦め、苦笑を浮かべながら僕は鷹近の元へ行った。
「恋、夜は鷹近と一緒にいるんだろう? 今晩遅くなるって伊座夜に連絡した?」
「あ~どうせ一度家に帰るから、その時に言う」
午後からの授業、僕とレンはサボって屋上へ来ていた。
給水塔の上、誰もいない屋上は秘密の会話をするのに適していた。
僕はペットボトルの紅茶を、レンは紙パックのイチゴミルクを飲みながら、青空に視線を向ける。
「あーあ、今夜は鷹近の相手か。明日、休ませてくれないかなぁ」
「そんなに学校生活、イヤ?」
「イヤだよ、堅苦しいし。面倒だし、バカなヤツら多いし」
給水塔の上で横になり、レンは顔をしかめた。
でもしかめた顔も可愛い。
レンは幼い顔立ちをしているので、僕の弟という設定になっている。
ギリギリまで同級生を望んでいたが、イザヤに却下と言われてしまったら、レンとて黙るしかない。
さすがに二人いっぺんに鷹近のクラスに転入したとなれば、兄弟という設定でも多少怪しまれる。
ただでさえ血の繋がりのない僕らが兄弟という設定にしているのは、苦しいところもあった。
なので二人一緒に見られることを少なくする為、レンは一学年下になったのだ。
「早くいつもの生活に戻りたい。オレは太陽の下よりも、月の下の方が良い」
そう言って手を翳し、太陽の光から眼を逸らす。
「まっ、それには同意するけどね。早く終わらせたいなら、鷹近から設計図の情報を貰わないと」
「分かってるって! 遊真の方こそどうなんだよ? 一応親友なんだろう?」
「ん~。あともう一歩かな? 恋のもう一押しがほしいところ」
にっこり笑いながら言うと、レンは大きな猫眼を吊り上げた。
「何かその言い方、ズルい」
「そう? 僕の正直な気持ちなんだけどな」
「はぁ。分かったよ。今夜はアイツに抱かれてくるから」
すでにレンは鷹近と体の関係を持っていた。
男に慣れているレンにかかれば、鷹近などイチコロだろう。
「苦労をかけるね」
「別に良いよ。アイツ、短小・早漏で楽だし」
うわーお。
……男として、あんまり聞きたくない言葉だ。
「終わった後も、ちゃんと綺麗にしてくれるし」
「そっそう」
…この後、どんな顔で鷹近を見ればいいのか、ふと悩んでしまう。
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