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レンはすぐに恋人役に入る。
鷹近に駆け寄り、抱き着いた。
そして上目使いで見上げ、甘ったれた声と表情を作り出す。
―これには素直に尊敬する。
私生活で何が起ころうと、仕事は仕事と瞬時に切り替えられるんだから、やっぱりレンも幹部だよな。
なのに僕ときたら、なかなか切り替えられずに今まできてしまった。
レンのこと、見習わなきゃな。
「会いたかったぁ。オレがいない間、浮気しなかった?」
「バカだなぁ。オレはお前一筋だって」
「おえっ…」
必死に吐き気を押さえるも、寒気は抑えきれない。
頭の天辺から足先までぞぞぞっ…と鳥肌が立つ。
周囲にいる学生達も白い顔色で、ピンク色のオーラを出す二人からズサッと遠ざかる。
―が、僕はレンに厳しい視線を向けられ、すぐに親友役に入る。
「鷹近、朝から濃いのは止めてよ。それより例のどうだった?」
「おうよ! 上手くいったぜ」
僕とレンは視線を交わし合った。
「じゃあちょっと屋上へ行こうか」
「だな」
昨日の今日でこんなに上手くいくとは……いや、まだ早い。
ちゃんと設計図をこの眼にしないとな。
僕達はホームルームもサボり、すぐに屋上へ向かった。
朝だから誰もいない。
「見ろよ、コレ!」
鷹近は自信満々にカバンから、雑誌サイズの茶色の封筒を取り出した。
「昨日、実家に帰ってさ。たまたま親父がいなくて良かったぜ」
そう言って封筒から取り出したのは、茶色くてボロイ紙。
しかし広げて見ると、横幅が一メートル、縦幅が五十センチと大きかった。
「すごっ…」
流石のレンも眼を丸くしている。
カラクリ邸の設計図なだけはあり、事細かく紙一面にびっしり字や図が書き込まれてあった。
「でも古過ぎて文字とか読めねーんだよな」
それに所々は虫食いがあって、コレは難解だな。
でも解読するのは僕らの仕事じゃない。
ハーミットの仕事だ。
僕はレンに視線を送った。
するとすぐに気付き、頷く。
「ありがとう鷹近。オレ、すっごく嬉しい!」
レンは感極まったように、鷹近に飛びついた。
そしてうっとりした顔を、鷹近に間近で見せる。
鷹近の表情がだらしなく緩んだ。
「いっいや、お前が喜んでくれんなら、オレだって嬉しいし」
「本当に鷹近って優しいよね。オレ、惚れ直したカモ」
「そうか?」
「おいおい、僕の前では止めてくれよ。せめて見えない所で頼むよ」
「はーい、兄貴。じゃあ鷹近、ちょっとあっちに行こう」
「そっそうだな。遊真、すぐに戻るから」
「はいはい」
鷹近はレンに手を引かれ、僕の眼の届かない所まで連れてかれた。
「さて、と」
僕は制服のポケットから携帯電話を取り出し、短縮ボタンを押した。
『どうした?』
相手はイザヤだ。
「設計図を持ってこさせました。今から画像を送ります」
『分かった』
通話はそれで終了。
僕は設計図を、携帯電話の写真機能を使って何枚か撮った。
そしてそれをイザヤのパソコンへと転送する。
すると今度はイザヤから電話がかかってきた。
『ちゃんと届いたぞ』
「そうですか。ハーミットによろしくと伝えてください」
『ああ』
二度目の会話、終了。
今は携帯電話からでも写真が撮れるんだから、良い時代に生まれたものだ。
とシミジミ思っている場合ではない。
レンに空メールを送る。
空メールは合図、仕事が終わったというサインだ。
今はバイブ設定にしているはずだから、レンだけが気付くだろう。
そうすればホラ、戻って来る。
「お待たせ、兄貴」
「ああ。鷹近、見せてくれてありがとう」
「いや、良いってことよ。でも親父にバレる前に、戻さなきゃいけないからさ」
「うん、もう良いよ。恋も満足しただろう?」
「うん!」
レンは上機嫌に頷いた。
これでやっと鷹近から解放されると思うと、嬉しくて仕方ないのだろう。
「悪いな。じっくり見せられなくて」
鷹近は丁寧に設計図を折り畳み、封筒へ入れた。
「じゃあ教室に戻ろうか。流石に二時間目ぐらいからは授業受けたいし」
「兄貴は真面目だよな」
「学生のうちは真面目にしておくものなんだよ」
学生でいられる時間は、もう残り少ないだろう。
僕はレンの頭を撫でて、鷹近にとびっきりの笑みを見せた。
「行こう、鷹近」
「…いや、ハーミットの仕事が早いことは知っていたんですけどね。実行が今朝の夜って、どういうことですか?」
「ぶつぶつ言うな。エンペラーの決定だ」
「ぐっ…!」
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