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「まあそこまで恋焦がれているってことだね。意外と純情だねぇ、ラバーも」
やっていることはとても『純情』とは言えないと思うんですけど…。
「でもデスはそれに応えているワケでしょう? 案外ラバーでも悪くないと思っているんじゃないんですかね」
「あっ、もしかして妬いてた?」
「………まあ、少しは」
僕はフールから顔を背け、低く呟いた。
フールのまとう空気が軽いせいか、どうも口が軽くなる。
「デスは言葉少ないし、態度にも出しにくいからね。いろいろと理解に苦しむこともあるだろうけど……デスがラバーを抱くのは、ラバーの暴走を止める為だと思うよ?」
「暴走って…」
「うん、耐え切れずにマジシャンを襲撃しないように―だね。だから求められれば抱く。そして性的欲求を発散させて精神的にもある程度は満足させておけば、マジシャンを襲うこともないだろうと思っているんじゃない?」
それは……物凄く納得できる。
先の任務の時には、一度たりともデスはラバーを誘わなかった。
きっと鷹近で発散していると考えたのだろう。
だから抱く必要がないと思ってた。
…でも僕は毎晩のようにデスに呼ばれ、抱かれた。
ラバーの仕事が上手くいかなかったのは慣れない環境と、キライな相手がタイプだったからと思っていたけれど……もしかしたら、僕とデスのことでストレスを感じていたのかもしれない。
それが爆発したのが、この前の夜ってことか。
……全てが合点いくと、それはそれで困ったことになるな。
頭を抱え、唸るほどに。
「僕は今後、二人にどんなふうに接すれば良いんでしょうかね?」
「今と変わらなくていいと思うよ? しかしモテる男は辛いねぇ」
明らかにバカにしているな?
眼で怒りを表すと、フールは手を振った。
「いや、本当に。ホラ、ウチの組織って個性強いの多いでしょ? だからマジシャンみたいなタイプが人気なんだよ」
それは暗に、僕が平凡だと言っているな?
まあ否定はできないけど。
「まっ、平凡なのを褒められるのは悪い気はしませんよ。個性を求められるよりはマシですしね」
「確かにデスやラバーは個性強いからね」
いや、キミもかなり強い方です。
少なくとも一回会えば、忘れられないタイプだ。
「二人に耐え切れなくなったら、ボクに相談するといいよ。逃げ場になってあげるから」
ふとフールの声と眼に、艶が滲んだ。
マズイ空気が流れ始める。
僕は再び身の危険を感じて、ソファーの上でフールと距離を取った。
「僕にちょっかいを出すと、二人が黙っていませんよ。デスとラバーの攻撃を、キミが避けることができるとは思えませんが?」
「うん、でも逃げ足の速さは自慢なんだ」
確かに攻撃を受ける前に逃げ出せば…って違う違う。
「お断りしておきます。相談はテンパランスが先約ですので」
「おや、そうだったんだ。じゃあ二番手でいいや」
何の予約だっ!
この人もハーミットと同じタイプで、理解できない人物だ。
しかし突如フールは肩を竦め、立ち上がった。
「それじゃあ怖い人が睨んでいることだし、ボクは退散するよ」
「怖い人って…うわあっ!」
ソファーの上で、僕は飛び上がった。
フールが指さした方向を見たら、デスが扉に寄り掛かってこっちを見ている!
心臓がありえないほど高鳴った。
変なところで気配を消さないでほしい。
「じゃあオヤスミぃ~」
フールは笑顔で退室した。
残ったのはショックを受けている僕と、無表情のデスの二人。
―生き地獄再び。
「どっどうしました? デス」
僕は引きつった笑みを浮かべた。
デスから発せられる不穏なオーラが、恐怖を煽ってくる。
室温が二度ぐらい下がった気がする…。
「忘れ物だ」
そう言ってデスは僕に書類を差し出した。
ああ、テーブルに置きっぱなしだったっけ。
「それはすみません」
書類を受け取ろうと伸ばした手は、しかしデスに掴まれ、書類は床に落ちた。
「デス?」
デスは空いている手で僕の襟元を探り、ガーゼをいきなり剥がした。
「イタッ!」
ラバーが付けた傷痕をジッと見ている。
が、突然唇に歪んだ笑みを形作った。
「飼い犬に噛まれるとは、まさにこのことだな」
「…どちらかと言えば猫だと思いますけど」
飼い猫に引っ掻かれた、と言った方がシックリくるなと場違いにも僕は思った。
「フンっ。先の一件で調子づいているな」
「いっいや、ちゃんと隠さなかった僕も僕ですし…」
どうしても語尾が弱くなってしまう。
この前の夜のことは、僕にも悪い所はあったワケだし。
「お前は少しでも眼を離すと、誰でも誘い受けるみたいだな」
「それはとんでもない誤解なので、否定しておきます。ちゃんと分かっていますよ。僕はアナタの物です」
「そう口で言いながら体で拒まない。お前はとんでもない性悪だ」
「どちらかと言えば貞操は固い方だと思いますよ? アナタ以外の人間なんて知りませんし、これからだって知ろうと思いません」
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