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後ろで騒がしく話す大人達を尻目に、僕とたかきよくんは、靴を履いて玄関を出た。
玄関前の庭は、たまに道を通る人から丸見えだから、たかきよくんの手を引いて裏庭に回る。木と木の間の少し広い場所で止まって、たかきよくんと向かい合わせになった。
「ここでいっか。じゃあたかきよくん、変身ごっこしよう。たかきよくんから見せてくれる?」
「うん、いいよっ。せいらん、見てて」
たかきよくんが、小さな両手を胸の前で組んで、ギュッと目を瞑って「んぅ~」と唸る。なんだか見てる僕まで、手に力が入ってしまう。と、いきなりポンッと音がしそうな勢いで、頭の上にフサフサの茶色い耳が生えた。
「わぁ~」と見蕩れていると、「出来たっ」と高い声がする。慌ててたかきよくんのお尻を見ると、ズボンの上の隙間から、これもまたフサフサの茶色い尻尾が飛び出していた。
「うわぁ…、す…」
「すごいすごいっ!天清くん、すごいねぇ」
「天清っ、天才だっ」
「親バカ…。でも、まだ小さいのにすごいよ」
僕の後ろから、大人三人のまた騒がしい声が聞こえる。
僕は、僕とたかきよくんの遊びを邪魔されたように感じて、むぅーと頬を膨らませた。そんな僕に、たかきよくんが、「せいらん、どう?すごい?」と目をキラキラとさせて聞いてきた。
「うん、すごいよ。たかきよくんの毛、フワフワだね。触ってもいい?」
「いいよ。ふふ」
ソロリと触った耳は、フワフワで柔らかい。僕が耳を撫でると、たかきよくんは、くすぐったそうに首を竦めて笑った。
「ふふっ、くすぐったいっ。じゃあ次はせいらんの番!」
耳に触れていた僕の手を両手で掴んで、たかきよくんがニコリと笑う。
僕は、「いいよ」と言って、背中に意識を集中させる。
僕が着ている長袖Tシャツの背中には、いつでも翼が出せるように切れ目が入っている。その切れ目から、バサリと背中を覆う黒い翼を出した。
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