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両方の翼を大きく広げて、僕は得意気にたかきよくんを見た。
たかきよくんは、ポカンと口を開けて翼を見ている。その顔が可愛くて、僕は笑いながら翼を二三度羽ばたかせて見せた。
「うっ、うわあっ!すごいっ!せいらんっ、かっこいいっ!」
両手を頬に当てて、目を大きく開いて、たかきよくんが僕の翼をジッと見つめる。
あまりにも熱心に見つめてくるものだから、僕は少し照れて、広げていた翼をそっと閉じた。
「せいらんの羽、すごいねっ。せいらんは、ぼくと同じじゃないの?」
僕の肩越しに見える翼を見ながら、たかきよくんが不思議そうに首を傾げて聞いてきた。
僕は、たかきよくんに手を伸ばして、もう一度、ピョコンと揺れる耳を触った。
「僕はね、天狗なんだ。僕のお父さんもお母さんも、郷に住む天狗は皆んな、黒い翼を持ってる。だけどね、僕のおじちゃんだけは、銀色の翼なんだよ」
「ぎんいろ?あの、スプーンのいろ?」
「そう。よく知ってるね。黒と違って、すっごくキラキラとして、とてもキレイなんだ…」
「そうなの?せいらんのも、キラキラしてるよ?」
いつの間にか俯いていた僕の顔の前に、丸い顔が現れる。必死に身体を曲げて、僕の顔を見ようとするたかきよくんの様子がおかしくて、僕は耳を触っていた手でフワフワの髪の毛を撫でた。
「ありがと。僕ね、たった一人、違う色の翼を持つしろおじちゃんが羨ましいんだ。だって、皆んなと同じじゃなくて特別なんだもん…」
「…よくわかんないけど…。ぼくはみんなと同じがいい。ぼくね、お母さんが人間だから『はんよう』って言うんだって。おまえに尻尾なんか出せない…って言われてね、そんなことないもん!って、いっぱい練習したの…」
「え?誰がそんな…」
「誰だあっ!そんなことを言いやがった奴はっ!ぶっ飛ばしてやるっ!」
しょんぼりと俯いてしまったたかきよくんの傍に、たかきよくんのお父さんが駆けて来て、大声を出しながらたかきよくんを強く抱きしめた。
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