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腕を引っ張られて進み、後ろを向いた僕の視界から、凛の姿がどんどん小さくなっていく。
動物園の出口に向かって角を曲がった所で、とうとう凛の姿が見えなくなった。
「ねぇっ、おじちゃん!今の人、だれ?」
たかきよくんのお父さんは、僕をチラリと見たものの、すぐに前を向いて止まらずに言う。
「あいつは…龍の妖だ。六年前に、自分のものだと言って、凛ちゃんを連れ去ったことがある」
「えっ?じ、じゃあ、凛があぶないじゃんか!」
足を止めようとする僕の腕を強く引いて、たかきよくんのお父さんは、動物園を出て駐車場に向かう。
「あの時は、すぐに一ノ瀬さんが凛ちゃんを助けた。それにあいつは、六年前に大事なヒゲを抜かれて、今は何の力もない筈だ。それなら、凛ちゃんでも一ノ瀬さんが来るまで何とか出来る…」
「だって!凛は人間だよっ」
駐車場の車に着くと、たかきよくんのお父さんは、ドアを開けてたかきよくんを座らせる。
僕にも乗るように言ったけど、渋っていたら、両脇を抱えられて乗せられてしまった。
「おじちゃん!僕、凛を助けに行きたいっ」
「ダメだっ。おまえが行けば、足でまといになる。それに凛ちゃんは、人間だけどすげーんだぜ。まあそれは、凛が戻って来たら聞け。天清、青藍、ここから動くなよ?」
僕とたかきよくんに強くそう言って、たかきよくんのお父さんはドアを閉めた。
僕は、窓に張りついて外を見る。たかきよくんのお父さんが、スマホを耳にあてて、誰かと話してるようだった。
たかきよくんのお父さんは、ああ言ったけど、やっぱり僕は凛が心配でジッとなんてしていられない。
「いやだ…」と呟いてドアの取っ手を掴んだ僕の背中に、たかきよくんが抱きついた。
「なにっ?」
「せいらん、ダメっ!お父さんがここにいろ、って言ったから、出ちゃダメっ」
「いいから離してよ。だって…、凛が連れ去られてしまうかもしれないんだよっ。ケガをしちゃうかもしれない…。僕、大好きな凛が、ケガするなんて嫌だっ」
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