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僕に向かって伸ばした手をそのままに、男の人が口端を上げて笑う。
「俺は、六年間、力が使えない間ずっと本を読んでいたんだ。あらゆる種類の本を…。その中に、今、凛がやったような力を使う人間のことが書かれた本があったよ。それを使われた妖が、どう対処すればいいかという本と一緒に。凛が手を組んだ瞬間にすぐ回避の術をかけた。でも、それじゃ面白くないから、かかった振りをしたのさ。凛…残念だったな?」
「あっ!やっ、いたい…っ」
翼に巻きついた透明のヒモが、更に強い力で翼を引っ張る。ギシギシと響く背中の痛みに、僕は涙を流して声を上げた。
「やめてーっ!」
固く目を閉じて痛みに耐える僕の耳に、甲高い声が聞こえてきた。うっすらと目を開けて声が聞こえた方に顔を向ける。フサフサの耳を頭につけて、たかきよくんが僕に向かって走って来るのが見えた。
「こらっ!天清っ、止まれっ!」
たかきよくんの後ろから、たかきよくんのお父さんが追いかけて来る。でも、なかなかに足の早いたかきよくんは、すぐに僕の足元に来て、男の人に向かって小さな炎の塊を投げつけた。
「…あつ…っ!なんだ?このガキはっ。…へぇ、俺が串刺しにしてやった、おまえの子供か」
男の人が、たかきよくんの少し後ろで止まったたかきよくんのお父さんを見て、ポツリと言った。
「…てめぇ、しつこいぞっ。どんなことしたって、凛ちゃんの気持ちがあんたに向くことはないっ」
「おまえもあの頃と変わらずうるさいなぁ。何?もう一度串刺しにされたいのか?」
「…ぐ…ぅ」
「お父さんをバカにするなっ。せいらんをいじめるなっ」
背中の痛みが辛くて、汗か涙かわからないもので僕の視界がぼんやりと滲む。足元には凛がしがみつき、少し離れた場所で、たかきよくんのお父さんが、引きつった顔をして固まっている。ただ一人、たかきよくんが、男の人に小さな火の玉を、次々と投げつけていた。
よく見ると、少しは効果があるようで、男の人の服が焦げ、肌が所々赤くなっている。
「…チッ…!邪魔なガキだっ。俺は、天狗も妖狐も嫌いだ!」
一瞬にして、男の人の周りの空気が変わる。身体の両側に水の玉が浮かび、まるで生きているかのように形を変えて、二本の鋭い透明なナイフになった。
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