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風を感じた瞬間、凛が勢いよく空を見上げる。
つられて僕も顔を上げる。その視線の先に、大きな銀色の翼を広げた、しろおじちゃんの姿があった。
「凛っ!青藍っ!」
しろおじちゃんが静かに降り立ち、すぐに凛を抱きしめる。
凛は、しろおじちゃんの服を震える指で掴んで、「俺…は、大丈夫…。青藍と、天清くんが…っ」と言って、また涙を流した。
しろおじちゃんは、僕の肩の傷を見ると「すぐに治してやる」と言って、僕の頭を撫でた。
そして、凛を落ち着かせるように軽くキスをすると、ゆっくりと立ち上がり、男の人に一歩、近づく。
「ずいぶんと久しぶりだな。せっかく返してもらったヒゲを、また抜かれたいようだな…」
「ふん、そうは行くか。今度はおまえの翼を抜いてやる。そして、凛を連れて行く」
「しつこい奴だな。どんなに足掻こうと、凛がおまえを選ぶことなどない」
「はぁ?凛がいるのに、他の女にそのガキを生ませたおまえに言われたくない」
「…バカか?俺が凛以外に触れるわけないだろ。この子は、俺の従兄弟の子供だ」
「…ふ~ん…。ま、どうでもいいけど。おまえの代わりに、そのガキの翼をもぎ取ってやろうと思ったけど、本物が来たからもういいわ。さてと…、覚悟しろよ」
しろおじちゃんが、チラリと横目で僕の背中を見た。その瞬間、周囲の空気がビリビリと震えて冷たい温度に変わる。
バサリと翼を広げたしろおじちゃんが、素早く男の人の背後に回って抱きつくと、姿が見えなくなるくらいの高さへと、一気に上昇した。
あまりにも一瞬のことで、泣いていた凛も、泣きじゃくっていたたかきよくんも、静かになって、ぽかんと口を開けて空を見上げた。
よく目を凝らすと、微かに小さく二人の姿が見える。そこへ、いつの間に現れたのか、三人の天狗と一人のよくわからない妖が近づいた。その四人が、しろおじちゃんから男の人を受け取ると、どこかへと飛んで行った。
一人になったしろおじちゃんが、ものすごい速さで降りてくる。地面に降り立つとすぐに凛を抱きしめ、もう片方の手を伸ばして、僕を抱き寄せた。
「青藍、よく頑張ったな。凛を、助けようとしてくれたのだろう?」
「うん…。でも、役に立たなかった…」
「そんなことないよっ。青藍、ありがとう…。青藍は強いね…。俺の方こそ、守ってやらなきゃいけなかったのに。怪我させて、ごめん…。天清くんも、ごめん…」
「凛、僕怒るよ?これはアイツのせいっ。凛のせいじゃないもん。次、謝ったらホントに怒るから…っ、あ、いててっ…」
凛が泣き笑いの顔になって、僕の頭を何度も撫でる。その手の感触が気持ちいいのと、傷口がズキズキと痛いのと、とても疲れていたこともあって、僕はそのまま意識を失ってしまった。
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