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鼻をくすぐる甘い匂いに、スンスンと鼻をすする。すぐ傍で、クスクスと笑う優しい気配を感じて、僕は目を開けた。ぼやける瞳を手の甲で擦りながら、反対の手を伸ばすと、暖かい温度に包まれる。
「青藍、気分はどう?」
「…ん?大丈夫だよ、凛」
僕を覗き込む大好きな人に、ニコリと笑って答える。僕の様子を見て、凛はホッと小さく息を吐いた。
僕が身体を起こそうとすると、凛が慌てて背中を支えてくれる。
平気なのに…と思ったけど、左手をついた時に、肩が少しだけピリリと痺れた。
首を傾げて左肩に手を当てる僕を見て、凛が悲しそうな顔をする。そんな顔をする凛を不思議に思って、右手を伸ばして凛の頬をそっと撫でた。
「どうしたの?泣きそうな顔してる…」
「…うん。…青藍、ここ、痛くない?」
凛が、僕の左肩を撫でながら聞いてくる。
「痛くないよ。でもね、さっき力を入れた時に、ちょっとだけピリッてした」
「そっか…。あのね、昨日の動物園でのこと、覚えてる?」
「うん…。凛を狙った悪い奴がいた…。あいつ、どうなったの?」
「それは銀ちゃんがまた話してくれると思う…。青藍と天清くんは、あの男に怪我させられただろ?あの後、二人をすぐにこの家に連れ帰って、銀ちゃんが呼んだ天狗の郷の医師に見てもらったんだ。最近出来たっていう、塗り薬を塗って、化膿止めの薬も飲ませた。そのおかげで、少し熱が出たけどすぐに下がって、傷口ももう塞がってる。でもね、綺麗には治らないらしい…」
凛の大きな目がみるみると潤み、ポロリと涙が頬に落ちる。
僕は慌てて凛に抱きつき、凛の柔らかい髪の毛を何度も撫でた。
「凛、泣かないで。僕、大丈夫だよ!こんなの、全然なんともないっ。それに、凛が連れて行かれなくて良かった、って思ってるもん!」
「…ずっ、うっ…、青藍…ありがとう。でも、刺された所、薄く赤い痕が残ってる…。まだ幼い、綺麗なすべすべの肌なのに…」
凛の話を聞いて、僕は凛から身体を離すと、パジャマのボタンを外して左肩を見た。確かに、百円玉くらいの赤い痕があった。その痕に指で触れてから、またパジャマを着る。
僕は、凛の両手を握ると、ニコリと笑って言った。
「ふふっ、こんなの、ちっとも気にならないよ。平気だよ。だから、凛はもう泣かないで。凛が泣くと、僕まで泣きたくなっちゃうから」
「青藍はホントに優しいね…。いい男になるよ」
「当たり前でしょ?あ、ねぇ、じゃあたかきよくんも、痕残っちゃったの?」
「うん…。天清くんは、右肩に同じような痕が残った。ついさっき、清から電話があってね、天清くんも目を覚ましたんだって。それで、傷の痕を見て『せいらんとおそろいだっ』って喜んでたって。ふふ…あの子も強いよね…」
「うんっ、ふふっ」
クリクリの大きな目を見開いて、嬉しそうに叫ぶたかきよくんの丸い顔が目に浮かび、思わず僕は、吹き出してしまった。
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