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今現在、天狗一族の頂点にいるのは、銀おじさんのお父さんの一ノ瀬 縹(いちのせ はなだ)だ。
そして、あと数年で、僕のお父さん、一ノ瀬 鉄(いちのせ くろがね)が一番偉い人になる。
天清も僕と似たような環境で、今現在、妖狐一族の頂点にいるのが、天清のおじいさんらしい。そして、次期当主になるのが、天清のお父さんの兄、真葛 宗忠(まくず むねただ)だそうだ。
僕と天清は、いずれは一族の上に立つ身なんだ。だから他の誰よりも強くならなければダメなんだ。
でも、そんな立場がなかったとしても、僕は強くなりたい。大切なものを守るために……。
僕と天清の寮の部屋は、同じ建物内にある。妖狐が三階、天狗が四階と決まっている。
建物内のエントランスを抜け、四階までの階段を一気に駆け登る。その間も、天清は僕の手を握ったままだ。
僕は、全速力で駆け上がったというのに、終始、天清にグイグイと手を引っ張られていた。
出会った頃の天清は、僕よりも小さくて、僕よりもか弱くて、「守ってあげなきゃ」と思ってしまうくらいに可愛いかったのに。
少し細くなったとは言え丸い顔は相変わらずだけど、今では身長が僕と同じくらいになり、力は僕よりも強いくらいだ。
僕の部屋の前に着くと、天清が「青藍、開けて?」と少しも乱れていない息でにこやかに言う。
胸に手を当てて、ゼイゼイと荒い呼吸を繰り返しながら、僕は天清を睨んでリュックのポケットから鍵を取り出す。それを僕の手から奪って、天清が鍵を開けると、僕の肩をそっと押して部屋の中に入った。
ドアがバタンと閉まるなり、天清が僕を抱きしめて背中を撫でる。ドキン!と鳴った心臓の音を隠すように、僕は天清の肩を押してきつく言う。
「なっ、何してんだよっ!」
「え~?だって青藍、息が苦しそうだったから。落ち着かせようと思ったんだよ」
ケロリと涼しい顔をしてそう言うと、僕のこめかみから流れ落ちた汗を指で拭って、ペロリと舐めた。
驚いて口を開けたまま固まる僕に微笑んで、天清は、さっさと靴を脱いで部屋に上がり、リュックを床に置くと、部屋に備え付けの洗面台で手を洗った。そして部屋の真ん中に置いてあるローテーブルの傍に座ると、不思議そうに僕を見上げて、「早く宿題しよ?」と笑った。
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