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二週間前に、天清がこの学校に来てから、僕はずっと振り回されっぱなしだ。
僕が二年前にこの学校に入ってからは、二三回しか天清と会っていなかった。それでも、会うといつもの人懐っこい笑顔で僕に駆け寄り、学校の話をすると目を輝かせて楽しそうに聞いていた。とても素直で可愛かった。
でも去年は、夏休みも冬休みも僕はずっと寮にいて勉強と修行をしていたから、約一年近く、天清と会っていなかった。
そしてこの春、久しぶりに会った天清は、人懐っこい笑顔は相変わらずで、前以上に僕にベタリとくっついて、常に傍にいたがる様になっていた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
天清の前に、お茶のペットボトルを置く。天清が、よく冷えたそれを手に取ると、ゴクゴクと音を鳴らして勢いよく飲んだ。
「喉、乾いてたの?」
「うん、だって今日、暖かくない?」
「まあそうだね」
半分程飲んで、天清がペットボトルをテーブルに置く。僕も二三口飲むと、フタをしてテーブルの端に置いた。
リュックから宿題を出してテーブルの上に広げる。
もう既に宿題を広げていた天清が、なぜか僕の方をジロジロと見てくる。
ーー最近、よく僕の顔を見てくるけど、何かおかしいの?
そう思って溜息を吐きながら、「なに?」と天清と目を合わせた。瞬間、天清がニコリと笑って僕に顔を近づける。そして、舌先で唇をペロリと舐めて、至近距離で微笑んだ。
僕はカッと顔が熱くなって、持っていた鉛筆をポトリと落とす。そんな僕を気にもしないで、天清は、顔を離して鉛筆を手に持つと、カリカリとノートに書き始めた。
僕は、両手をバン!とテーブルに置いて立ち上がる。
「どうしたの?」
「トイレっ」
不思議そうに首を傾げて聞いてくる天清に、ぶっきらぼうに答えると、洗面台の奥にあるドアを開けて中に入った。
僕は、便座に腰掛けて、天清に舐められた唇を手の甲で乱暴に拭く。
昔から天清は、よく僕に抱きついたり頬を擦り寄せたりしていた。テンションが上がると、頬にキスをする事もあった。
それを可愛いなぁ、と思って受け入れていた筈だ。慣れていた筈だ。なのになんで、僕は今、こんなにも顔を熱くして動揺しているのだろう?
『なにやってんの』と笑って流せばいいのに、恥ずかしくて何も言えなかった。天清は、何事も無かったかのように澄ましていたから、僕も同じようにすればいいだけなのに。
僕はどうしちゃったんだろう……。
しばらく悶々とトイレで考え込んでいたら、ドアの外から、天清の「お腹痛いの?」という、心配する声が聞こえてきた。
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