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「…っ!いたっ…」
「え?あっ、ごめんっ」
僕の声に、天清が慌てて肩から手を離す。今度は赤い顔を青くして、僕の左肩にそっと手を置いた。
「ごめんね、青藍…。傷痕が痛んだの?」
「うん。少しだけピリッとした。でももう大丈夫だよ。気にしないで」
天清は、僕の左肩を撫でていた手で僕の手を握り、真剣な顔をして口を開く。
「ホントに?俺の右肩の傷痕も、強く掴んでいいよ。青藍の感じる痛みを同じように感じたい」
「何言ってんの。大丈夫だって言ってるじゃん。だって天清、わざとした訳じゃないんだから」
僕の左手を握る天清の手の上に、右手を乗せてニコリと笑う。それでも天清は、泣きそうな顔をして僕の手を離さない。
「だって…っ、あの時同じように刺されたのに、青藍の傷の方が深かった。俺は、赤い痕が残ってはいるけど、痛くなったりしないっ。でも青藍は、時々痛がるじゃんか。俺が深く刺さればよかった。俺の方に痛みが残ればよかった…っ」
話しながら俯いてしまった天清の、座った足の上に、ポタリと雫が数滴落ちる。
学校に入って、身長も高くなって、『俺』と言うようになって、僕は天清に追い越されるんじゃないかと焦っていたけど、まだまだ可愛い弟のような天清の姿に嬉しくなった。
「天清はバカだなぁ。そんなの、僕だって同じだよ。天清に痛みが残らなくてよかった…」
右手を伸ばして天清の頭を僕の肩に寄せると、その柔らかい髪の毛を丁寧に梳く。耳の傍で鼻をすする音を聞きながら、僕は銀おじさんから聞いた話を思い出していた。
四年前、突然現れて凛を連れ去ろうとしたのは、龍の妖だった。
そこから更に六年前に、凛を自分の運命の相手だと思い込んでいた龍は、凛を守ろうとした天清のお父さんをメッタ刺しにして、無理矢理凛を連れ去った。でも、その龍の双子のお兄さんが協力してくれて、翌日には銀おじさんが助け出したという話だった。
そして、龍の双子のお兄さんと僕のお父さん、現当主に八大天狗の僧正、浅葱の五人に取り囲まれて連れて来られた龍のヒゲを、銀おじさんが抜いたんだそうだ。
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